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» 2021年05月31日 21時38分 公開

ウィズコロナ時代に深刻化するデジタルディバイドウィズコロナ時代のテクノロジー(1/2 ページ)

日本はコロナ禍の中でのテクノロジー利用で遅れている?

[小林啓倫,ITmedia]

 この連載でも取り上げてきたように、私たちは新型コロナウイルスのパンデミックという非常事態に対抗する手段の1つとして、さまざまなテクノロジーを活用してきた。

 流行が終息し、さらにウィズコロナでなく「アフターコロナ」(新型コロナウイルスの存在を前提としなくても良い)と呼べるような時代が訪れても、私たちが今、進化させているテクノロジーがどこかへ消えてしまうことはなく、恩恵を与え続けてくれるだろう。

 例えばテレワークを成立させるツールとしてすっかりおなじみになったビデオ会議サービスは、仮にコロナ後にテレワークを縮小する企業が主流になったとしても、多様な働き方を可能にすることで優秀な人材を確保する手段として使われ続けるはずだ。

 しかしこうしたデジタル技術の活用の広がりは、逆に深刻な影響を社会に与える可能性があることも指摘されるようになっている。その理由は、新たなツールやサービス類そのものではなく、それが使われる環境の側にある。

 ビデオ会議サービスを例に挙げれば、それを活用して離れた人々と打ち合わせをしようとした場合、サービスを使うための端末やWebカメラなどのハード類、そしてある程度高速・大容量のインターネット回線を用意しなければならない。

 普段からITに接し、それを利用している人々にとっては、それは当たり前すぎて気にも留めないだろう。だがそうでない人々にとっては、サービスを使う前の準備の段階でつまずいてしまい、デジタル技術の恩恵を受けられなかったり、新しい生活様式を受け入れようとする意欲を失ってしまったりする恐れがある。

 上記のような、いわゆる「デジタルディバイド」の問題が、ウィズコロナ時代に深刻化するのではないかという声が今、高まりつつある。

ウィズコロナ時代のデジタルインフラ

 2021年5月、カナダで「ポスト・パンデミック時代のデジタルインフラ」(Digital Infrastructure for the Post-Pandemic World)と題されたレポートが発表された

photo Digital Infrastructure for the Post-Pandemic World

 これはカナダ国内の非営利団体や、米Microsoftなど企業からの支援を受けて活動している「Skills for the Post Pandemic World」というプロジェクトが作成・発表したもので、タイトルの通り、パンデミックが終わった後で社会はどのようなデジタルインフラを必要とするかを考察している。

photo Skills for the Post Pandemic World

 カナダ国内の状況を分析したレポートではあるものの、1つの先進国におけるデジタル技術推進の在り方について、示唆に富むものとなっている。

 その指摘はなかなか刺激的だ。デジタルインフラの整備が適切に行われていないために、「デジタルトランスフォーメーションがもたらすものにおいて不公平が発生しており、構造的で差別的な社会的障壁を通じて、いくつかの不平等を深める結果となっている」というのである。

 デジタルインフラにおける不平等の一つとして挙げられている、インターネットアクセスの例を見てみよう。

 インターネットの普及と定着、そして充実により、「インターネットにアクセスできること」は私たちの生活において欠かせない要素となった。ネットへのアクセスを人権に準ずるものとして捉え、それを無料で、かつ検閲などの制限無しで使えるようにすることを求める運動が、既に世界各地で起きている。

 しかし実際には、あらゆる人々がネットを使えるという状況にはほど遠く、それにアクセスできるか否かが社会的・経済的不平等と結びついている例も多い。

 「ポスト・パンデミック時代のデジタルインフラ」では、それを示すエビデンスの一つとして、CRTC(カナダ・ラジオテレビ通信員会)の調査結果を引用している。

 それによれば、2020年の時点で、信頼性が高く手頃な価格でインターネットにアクセスできた人々の割合は、都市部では98.6%であったのに対し、先住民族の居留地では34.8%、地方部では45.6%となっている。また都市部の98.6%についても、フランス語も英語も話せない人々(その多くは新たにカナダに移住した人々)のみに限定した場合、その数値は90.6%に減少している。

 もちろんこれにはさまざまな理由があり、差別や歴史的背景の問題に単純化したり、政治家や政策だけに責任を押し付けたりすることはできない。しかし理由はともあれ、デジタル技術がこれまで以上に恩恵を与えるようになるウィズコロナの時代には、こうしたデジタルディバイドがさらに人々の間の格差を広げることになりかねない。

 こうした状況は、その深刻度や原因に違いはあれど、多くの国々で見られるものだ。そして各国でそれを解決するための政策が進められており、例えばカナダ政府も「コネクティビティー」戦略を掲げ、2030年までに全てのカナダ人がネットに(良好な状態で)接続できるようにするという方針を打ち出している。

 しかし前述のレポートでは、コロナ禍によってネットにアクセスできる公共の場(図書館など)や公共サービスに制限が生まれてしまっていることや、家庭内でネットを利用するニーズが増えたこと(親がテレワークするだけでなく子どもたちもリモート授業を求められているなど)を挙げ、従来の計画では不十分である恐れを指摘している。

 デジタルディバイドを解消するための政策はこれまでも進められてきたが、コロナ禍やウィズコロナを前提とした再検討の必要があるというわけだ。

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