ITmedia NEWS > 社会とIT >

GIGAスクール構想スタートで、学校はどう変わるのか ネット時代に頼れる教師の姿は(2/3 ページ)

» 2021年08月13日 12時23分 公開
[小寺信良ITmedia]

 トラブルの内訳を見てみると、小学校ではネットの長時間利用による健康の問題が、中学校では個人情報・プライバシー関係が上位に入っている。

photo 発生したネットトラブルの内容(小学生)
photo 発生したネットトラブルの内容(中学生)

 中学生で個人情報関係のトラブルが増えてくるのは、スマートフォン所持率が高くなるにつれ、写真やコミュニケーション内容など、他人のプライバシーに接触する情報が増えるからだろう。これまでは高校以上でよく講演テーマとして求められてきた内容だ。問題が起きる年齢が下がってきたということだろう。

 ネットトラブル発生のタイミングについては、学校外が最多なのは当然として、中学校では授業時間内外、つまり学校にいる時間帯で多く発生し始めていることが分かる。

photo ネットトラブル発生のタイミング

 これが以前から学校側がICT導入に反対してきた理由の一つだ。つまり、学校でのネット利用が始まれば、これまで学校外で起きていた問題を学校内に引き入れることになるからだ。

 結果としてその懸念は当たったわけで、学校側もネットトラブルに対して自分ごととして対処せざるを得なくなった。

 ネットトラブルをどのように認知したかについては、先生が気付くのがトップとなっており、これまで保護者のみでは発見が遅れていた部分がかなりカバーできるようになった。本人以外からの報告も中学校では非常に伸びている。

 リテラシー教育によって多くの子どもたちが、友達のトラブルを自分ごととして考えられるようになったり、「ネットトラブルも先生に相談していいんだ」という空気が出てきたりしたということでもある。方向性としては正しいと思う。

 教育の外側にいる人は、そもそもトラブルが起きないようにすることばかりを考えがちだが、学校とはそのようなものではない。学校とは、乱暴な言い方をすれば「子どもを死なせない程度にうまく失敗させるための機関」である。トラブルや挫折があり、そこでどうやって問題を解決させ、乗り越えさせるかが、先生の腕の見せ所である。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.