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コオロギ入りクッキーを3Dプリント 山形大学が開発Innovative Tech(1/2 ページ)

» 2021年08月17日 12時45分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 山形大学 ソフト&ウェットマター工学研究室(Soft & Wet matter Engineering Lab、SWEL)の研究チームによる「代替食品における3Dフードプリンターの活用」は、コオロギを粉末状にし、クッキー生地と混ぜた材料を食品専用の3Dプリンタで印刷する研究だ。

 昆虫はタンパク質やミネラルを豊富に含み、環境負荷が少ないことから将来の食肉の代替品として期待されている。その一方で、昆虫の見た目による忌避感が昆虫食の普及を妨げている。

 そこで本研究では、昆虫をいったん乾燥させてパウダー状にする方法で忌避感の低減を試みた。粉末化した昆虫は、他の材料と混ぜて3Dプリンタ(3Dフードプリンタ)で印刷し、本来の昆虫の外観を排除した食品に変化させる。

photo コオロギパウダー

 実験の材料には薄力粉40g、砂糖20g、コオロギパウダー20g、卵黄1個、バター(30gと40g)を使用する。3Dプリンタは、スクリュー式3Dフードプリンタ「FP-2400」(山形大学と世紀社の共同開発)を使った。FP-2400はスクリュー式の押し出し構造によってペースト状の材料を吐出し積層造形する。

photo スクリュー式3Dフードプリンタ「FP-2400」

 造形後は170度で15分間加熱し焼き菓子として仕上げた。今回はバターの分量による造形精度を比較するため、バター30gと40gの2種類を造形した。バター40gを使用したクッキー生地の造形物は、絹ごし豆腐やゼリーのような外観で出力。形状は保っているが油分がにじみ出ていることが確認された。焼くと体積が約2倍に膨張した。

photo バター40gを含むクッキー生地の造形後と焼成後

 バター30gを使用したクッキー生地の造形物は、40gと比べ油分のにじみは少なかった。しかし積層中に生地が定着せず、ノズルの動きに合わせて材料が引きずられる現象が確認された。

photo バター30gを含むクッキー生地の造形後と焼成後
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