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中二病が役立つ? 予想外の災害でも乗り切る方法デジタル防災を始めよう(2/3 ページ)

» 2021年08月31日 19時52分 公開
[戸津弘貴ITmedia]

悲観的に準備して楽観的に対処する

 あさま山荘事件で陣頭指揮を執り、内閣官房内閣安全保障の初代室長を務めた佐々淳行氏の危機管理語録の中に「悲観的に準備し、楽観的に対処せよ」というものがある。最悪の事態を想定して最大限の準備を行うが、いざ本番という際には「大丈夫、うまくいくさ」と成功を信じて行動するのが良いという意味だ。

 「楽観的に対処する」のよりどころは、「悲観的に、万全に準備」してきたことにあるが、事ここに及んでは前向きに対処すべしという意味も含まれている。

 事前の準備は重要だが、たとえ準備不足であったとしても、起きてしまったことは仕方ないので、そこからどう挽回していくか、手持ちの道具でどう乗り切るかという頭の切り替えも重要ということだ。

 豪雨や水害を例にとれば、事前にハザードマップなどで浸水エリアの確認をしたり、非常持ち出し袋のチェックや避難ルート確認などの避難準備、どの段階になったら避難するかなどを事前に決めておいたりすることは重要だ。しかし、気が付いたら周囲が水浸しだったという状況になったとしたら、そこから何とか脱出して生き延びるための行動を取らなければならない。

常にバックアッププランを準備しておく

 事前準備も重要だが、想像を超えた事態や、状況が急変するのも災害にはつきものだ。そんな時、事前準備した対処しかできないと、事態が悪化してしまう場合がある。

 芝村裕吏の小説「マージナル・オペレーション」では、ニートから傭兵になった主人公が部隊のオペレーション業務で頭角を現した際、上司や同僚からどのようにオペレーションしているのかと問われて、まず当座の方針を定めてそれが暫定1位の方針とし、その間に他に良い方法がないか考える。事態が進んで2位、3位のアイデアが適切だと思ったらそれを1位の方針とし、対処していくのだと回答するシーンがある。

 面白いと思ったのは、まず当面の方針(暫定1位)を決めるということだ。

 今すぐ対応しないと大変なことになる、というときには、まず決断して行動するのが(それがすぐに動かず、まず情報収集するという決断だとしても)最善で、その間に情報収集するなり、良い方法を考えるなり探すなりして、今採用している対処方法よりも良いアイデアが出たらそちらに変更するという「防災のPDCA」を回すことが重要だ。

photo 防災のPDCAを回そう

 マイタイムラインをきっちり策定して、想定通りに行動できていたとしても、バックアッププランは常に考えていたい。

 「考えること」そのものが大事な局面もあり、考え続けていることで突発的な事態に即対処できることもある。計画通りに進んでいる時こそ、想定外の事態に直面するとうろたえてしまうものだ。

 マイタイムラインにおいては、現在から5分後にやることと1時間後、1日後に対応すべきことでは想定する粒度が異なる。事前に設定する時はともかく、今後の対応を今考える場合は、おおまかな行動方針を設定したら、直後の詳細な行動から詰めていくなど、粒度の加減、配分を考慮したい。

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