ただし当然の反応だが、こうしたリモート監視に対しては疑問の声が挙がっている。過剰なデータの収集は従業員のプライバシー侵害に当たるのではないか、従業員を委縮させることで生産性の低下をもたらすのではないか、逆にすぐに「抜け道」を見つけて再びサボるようになるのではないかなど、こちらの主張もさまざまだ。
前述のTeleperformanceについては、自社のコールセンター従業員をテレワーカーにするに当たり、自宅を「監視」されることを望まない従業員にもデータ収集を認めるよう強制したのではないか(パンデミック下で職を失うかもしれないという不安に乗じて)と米NBCが報じている。
仮に、高度な監視テクノロジーが提供するのが、人間の上司と同じくらいの確認作業だったとしても、以前と変わらず生身の身体で仕事する従業員にはたまったものではないだろう。
機械の上司は疲れを知らず、個々の従業員が使う端末やWebカメラにじっと潜んで、「不正」と見なされる行動の瞬間を見逃さない。考えただけでもストレスを感じる人は多いはずだ。
さらに、そうした「不正」かどうかの判断自体が信頼できないのではないか、という懸念も生まれている。
2021年4月、米テキサス大学オースティン校の学生自治会が、大学側に対して「ProctorioのようなAIベースのオンライン試験監督ソフトウェアパッケージ」の使用を止めることを求める決議を採択した。
名指しされたProctorioは、オンライン上でのテスト実施・管理を実現するプラットフォームで、受験者はWebカメラを通じて自分の顔やID(学生証等)を撮影してログインするようになっている。
さらに試験中には、Webカメラを通じて受験者の挙動が撮影され、その映像データをAIが解析。カンニングなどが疑われる場合には受験者への警告が行われるとともに、当然ながら、テスト監督者への報告も行われる。
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