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重さが変われば味も変わるか? 東大、飲料の重さが味に与える影響を検証Innovative Tech

» 2021年09月08日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 東京大学 稲見・檜山・瓜生研究室が開発した「Balanced Glass Design: A flavor perception changing system by controlling the center-of-gravity」は、重量を変えて飲料の味を変化させる知覚変化システムだ。グラス型デバイスの重心が移動することで重量の変化を知覚させ、飲み物の味わいを変化させる。

photo グラス型デバイス
photo グラス型デバイスで飲料を飲んでいる様子

 食品を食べる際、見た目や匂いが違うと味覚が変化する現象はよく知られている。同じ原理で、食べものの“重さ”が変わると味わいも変化する。例えば、シュークリームを持った際には、その重さからクリームがどれくらい入っているかを知覚し、どの程度味が濃厚かを予測する。食べる前に予測した重さが味覚に影響を与えると考えられる。

 今回はこの現象を飲料に応用し、重心を変えられるグラス型デバイスを開発、重さの変化による飲料の味わいの影響を検証した。重さを加える場合、飲む動作に合わせてデバイスの重心をユーザーの方向に動かす。反対に軽さを表現する場合は、重心をグラスの底の方向に移動させる。

photo 重くする仕組み(左)軽くする仕組み(右)

 ユーザーは、重量移動により飲む動作に応じて重さの変化を感じながら、飲料を摂取できる。デバイスは、傾斜角を計測する加速度センサー、モータースライダー、Raspberry Pi、モータードライバー、紙コップなどで構成。装置全体の重さは127g(ワイングラスと同程度)、その内の79%の質量を移動させて重量変化を起こしている。

 実験では、被験者20人を対象にシステムを使って5種類の飲料(お茶、ジュース、スポーツドリンク、コーヒー、ワイン)の中から自由に選んで飲んでもらった。飲んでいる最中に、重たくなるバージョンと、軽くなるバージョンの2種類で検証を行った。

photo 実験の様子

 実験の結果、ほとんどの被験者が重さや軽さの変化を感じ取ることができ、重さの知覚から味覚の変化を感じられたという。飲むときの重さの変化によってグラスの傾き方が明確に変わったため、味も変わったように感じられたという意見も複数人から得られた。「飲むときの重さの変化によってグラスの傾き方が明確に変わったため、味も変わったように感じられた」と複数人が話した。

 この研究はSIGGRAPH 2021 Emerging Technologiesに採択されている。

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