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未成年の「ゲームは1日1時間」+「金土日だけ」=「週3時間」 揺れる中国、その影響は?(3/4 ページ)

» 2021年09月11日 07時58分 公開
[山谷剛史ITmedia]

抜け道を見つける未成年ユーザー

 このように中国での家庭用ゲーム機市場は大変なことになっているが、一方で家庭用ゲーム機の所有率はとても低い。中国でテレビゲームは学校のクラスで1人、2人しか持ってない一方、オンラインゲームの利用率は高いため、多くのゲーマーが話題にしたのは家庭用ゲーム機ではなく、オンラインゲームである。

photo 中国ゲーム市場規模(単位:億元)

 もっとも中国人の未成年、つまり学生は宿題が各教科で多数出るので、日本と違い、ゲームをやる余裕はあまりない。家では無課金でプレイし、学校に行けば教室での休み時間に語り合うのは中国ではよくある光景だ。中国の学校に通う中学生に話を聞くと、さっそく教室ではこのオンラインゲーム規制について話題にしているそうで、皆不満を口にしていたという。

 しかも規制が適用された最初の週末の4日(土曜日)には、テンセントがリリースする一番人気のMOBA(マルチプレイヤーオンラインバトルアリーナ)のゲーム「王者栄耀」について、ユーザーが同じ時間に集中しすぎてサーバが正しく稼働せず、アプリを起動しても一切遊べない事態になった。テンセントはおわびのしるしにとアイテム配布を発表したが、遊べるときを待ちわびた子どもたちは相当不満だったと聞く。

 未成年へのゲームの規制はこれが初めてではない。前述の「王者栄耀」は5月15日から対未成年のルールができている。「毎日午後8時から翌午前8時まで遊ぶのは禁止で、平日は1日1時間半、祝休日は1日3時間まで」というものだ。中国の未成年の学生にとっては、いきなり自由な段階から遊べなくなったというわけではなく、一応は段階を追って厳しくなったのだ。

 従ってこの突然の発表にも、抜け道を見つけている。上に政策あれば下に対策あり。よくある手段は、家族の大人のアカウントを利用して遊ぶというもの。

 子どもと大人と老人が一つ屋根の下で住むのはよくあるケースなので、困ったら子どもがおじいさんおばあさんにお願いすることも。おじいさんおばあさんが事情を知らずに貸してぼーっとしてる間に遊べるというわけだ。こうして(見かけ上は)還暦を過ぎた高齢のネットユーザーが、多人数同時対戦ゲームで無双するということが発生する。

 さらにゲームが遊べるアカウントを販売業者も続々と登場した。中国中央電視台のテレビでは、2時間33元(約500円)のレンタルアカウントを出品している業者がいると報道。テンセントは早速反応し各ECサイトにレンタルアカウントの販売停止を訴えた。

 加えて中国メディアは遊べるアカウントを得るためのツールや、ログイン時に顔認証を使ったゲームで顔認証をパスさせる業者もいると指摘。またSNSの微信上で詐欺師が未成年にゲームのロック解除すると声をかけ、親の微信のユーザー名とアカウント名を子どもから教えてもらい、キャッシュレスマネーを盗むといった事件も発生した。

 中国メディアはこれらの規制について経済的な影響を分析した記事を掲載している。

 主なものでは、企業収益における未成年の貢献は、業界最大手のテンセントで16歳未満のユーザーによる売上は2.6%、続くネットイースでの18歳未満のそれは1%未満、ビリビリで1%程度であり、他の企業もおおむね1%も占めない。だから経済的影響は少ない、という論調だ。

photo 未成年のゲームプレーヤーが占める中国各社の売上の割合(出典:遊戯新知)

 そして今後はSteamプラットフォームなどを意識しながら海外への展開にも注力するという。経済的には影響がないことをアピールするようだ。

 全くそれ以外の論調を禁止しているわけではない。ある現ゲーム業界勤務者はブログで「若いころにゲームを体験していたからこそ、今この業界を選択している。下の世代がゲームをしなかったら成功するだろうか」と疑問を投げかける。

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