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未成年の「ゲームは1日1時間」+「金土日だけ」=「週3時間」 揺れる中国、その影響は?(4/4 ページ)

» 2021年09月11日 07時58分 公開
[山谷剛史ITmedia]
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未成年向けのゲームを大幅規制した、その先の未来

 フリーゲームデザイナーの岩崎啓眞氏は、未成年向けのゲームを大幅規制する影響について次のように語った。

 「未成年の売り上げ的にはたいしたことはないから規制は大丈夫だという意見は間違っている。なぜならそもそもどの国でも特にF2P(Free To Play)における未成年の売り上げはとても小さいからだ(日本でもそもそも10%以下)。未成年は可処分所得が小さいのだから、売り上げも小さくなるに決まっている。そしてメーカーはそんなことは知っている。つまりあの発表は端的にいえば株主向けの説明だ。

 ではこの規制がもたらす最も大きな問題は何か?

 将来の(質が高い)作り手および(質が高い)プレイヤーの育成が行われるべき未成年の市場が壊滅する=将来の作り手およびプレイヤーが減ったり、質が落ちることだ。

 プレイヤーを例に取ると、ゲームをプレイしなければ、うまくなるわけもないのだから、週に3時間の練習ではeスポーツ選手はどうしようもない。直接的な弊害としては、まずeスポーツが弱くなる。

 ゲームへのなじみが減るのだから、次にはゲーム業界を目指す人だって減る。これは当たり前の話だ。週に3時間では新しいゲームに触れる機会が当然減る。新しいものに触れないということは、新しい発想や新しいジャンルに触れる回数が減る。作り手としての発想力は下がるし、世界のさまざまな流行についていくのは難しい。つまり作り手の供給は悪くなり、質も落ちることが容易に想像できる。

 1970年代後半に「テレビゲーム業界」が出来上がった時、自分を含めた未成年が毎日親と喧嘩をしながら数時間は投入するのが当たり前で、夢中になってゲームをやっていた。その自分を含めた未成年が、後の日本のゲーム業界を作り出したのだから、ゲームへの熱中を根絶やしにする政策が10年たったら中国に何がもたらされるのかは明快だ。

 今回の規制をまとめると、これから10年のスパンでみたとき、中国ゲーム業界の活力を大きく削ぎ、世界から遅れさせるのは間違いない」

ゲーム業界の暗い未来

 岩崎氏の分析にあるように、「ゲームが好きだからゲーム業界に就職する」という流れが途絶えてしまう。

 長期的にみると、中国のゲーム業界は経験の少ない作り手が作ることになるわけで、質、あるいはセンスが磨かれない人々が育成されることになる。今は世界に認められている中国製ゲームも、開発力が落ちていく問題は避けられない。

 もっとも中国政府にとってはそれも覚悟の上かもしれない。

 昨今の政策では、中国的な「よい子」を育てるために、小中学生に対して英語など学習塾など学外教育の負担を減らす政策、通称「双減」を発表。その結果一部の大手教育企業は壊滅に追いやられ、教師は仕事を失った。

 ゲームも少しくらいの被害は無視し、「よい子」育成を目指し、少子化を解決したい背景がある。いくつものゲーム関連企業が、先の学習塾チェーンのように潰れてもおかしくない。

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