JR東日本は9月13日、宮城県で行った自動運転バスの試乗会を報道向けに公開した。将来的な人手不足への対応を目指して2017年から技術検証を進めており、今回は商用車両をベースとした自動運転車を初めて使用した。走行ルートの制御には磁石と磁気センサーを活用したという。今後数年をめどに、バス専用道での運転支援などの形で実用化を目指している。
同社は、東日本大震災で被害を受けた気仙沼線・大船渡線の一部区間で、鉄道路線の代替としてバスによる大量輸送システム「BRT」(バス・ラピッド・トランジット)を導入している。今回実験に使った気仙沼線BRTでは、柳井津駅〜志津川駅など一部区間で、もともと鉄道が通っていた経路に沿ってBRT専用道が整備されている。
今回の実証実験では、愛知製鋼と先進モビリティ(東京都目黒区)が開発した磁気マーカーを使った自動運転システムを採用。道路上にフェライト樹脂磁石を埋め込み、車両上の磁気センサーで磁石をたどることで、正しいルートを走行する。
走行ルートは、BRT専用道が整備された気仙沼線の柳井津駅〜陸前横山駅間(4.8km)。途中のトンネル区間も通して自動運転で走行し、最高時速60kmで走行した。柳津駅と陸前横山駅の各ホームでは、ホームに沿って自動で停止させる「正着制御」も行われた。
気仙沼線BRT専用道は1車線道路で、途中の信号所でバス同士の対面交換(待ち合わせ)が必要となる。この制御には日本信号(東京都千代田区)が開発した、待避所に信号機を設置せず、バス車内からの4G LTE通信で管制信号をやりとりする「クラウド信号機」を活用した。
原則として一般車はBRT専用道を通行できないが、不慮の侵入を検知するためのセンサーも配置。高速道路向けの通信規格「ITS」(高度道路交通システム)を使ってバスと通信している。バス自体にもLiDARやカメラを設置し、単体で侵入物を自動で検知して停車する仕組みも備えた。
また、バス車内の異常や乗客の状況を把握するための遠隔モニタリングシステムも整備されている。バス車内のカメラ映像をAIでリアルタイム解析し、クラウドネットワーク上に送信。リアルタイムでモニタリングする仕組みとなっている。通信が難しいトンネル区間では、プライベートLTE網を構築して車内の様子をリアルタイムで送信する検証も行っている。
気仙沼線BRTでの自動運転技術の実証実験は、9月14日から16日にかけて、抽選に応募した一般参加者への公開も予定している。当初は全国から応募を受け付けていたが、新型コロナウイルス感染症の流行を考慮し、参加者をBRTの沿線住民の51人に絞って実施する予定だ。
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