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ゴキブリの頑丈さとスピード、チーターの俊敏さを兼ね備えた昆虫ロボットInnovative Tech(1/2 ページ)

» 2021年09月16日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 中国清華大学、米カリフォルニア大学バークレー校、中国電子科技大学、米カーネギーメロン大学、マカオ澳門大学による合同研究チームが開発した「Electrostatic footpads enable agile insect-scale soft robots with trajectory control」は、強い力で踏まれても動き続けるゴキブリのような頑丈さと、逃げる獲物を追いかけるチーターのような俊敏性を兼ね備えた昆虫サイズのロボットだ。迷路のような複雑な地形を横断し、予期せぬ障害物を素早く回避する能力を備える。

photo 電圧を加えると曲がったり収縮したりする層状の材料でできており、ゴキブリとほぼ同じ速度で床を駆け巡る

 多くの昆虫やクモが、壁を這い上がったり、天井を逆さまに歩いたりする不思議な能力を持っているのは、特殊な粘着性を持つ「足裏パッド」のおかげだ。研究チームは、静電接着と呼ばれるこの足裏パッドの原理を利用して、チーターのように素早く旋回できる昆虫スケールのロボットを開発した。

 このロボットは、電圧をかけると曲がったり縮んだりする薄い層状の素材で構成。本体重量65mg。時速約2.4km相当の速さで平らな面を駆け抜け、体重約54kgの人間に踏まれても大丈夫な作りになっている。

 2つの静電式足裏パッドに電圧をかけると、足裏パッドと表面間の静電力が増加し、足裏が表面にしっかりと固定され、ロボットの他の部分は足裏パッドを中心に回転する。

 この2つの足裏パッドにより、ロボットの軌道をコントロールでき、一般的な昆虫(ゴキブリなどの多くの節足動物)を上回る求心力での旋回が可能になる。まるでチーターが逃げる鹿を追いかけるような俊敏な動きを実現する。消費電力が低いため、バッテリーやセンサーなどの電子機器搭載も容易だ。

photo プロトタイプロボットの設計と性能
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