このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
中国清華大学、米カリフォルニア大学バークレー校、中国電子科技大学、米カーネギーメロン大学、マカオ澳門大学による合同研究チームが開発した「Electrostatic footpads enable agile insect-scale soft robots with trajectory control」は、強い力で踏まれても動き続けるゴキブリのような頑丈さと、逃げる獲物を追いかけるチーターのような俊敏性を兼ね備えた昆虫サイズのロボットだ。迷路のような複雑な地形を横断し、予期せぬ障害物を素早く回避する能力を備える。
多くの昆虫やクモが、壁を這い上がったり、天井を逆さまに歩いたりする不思議な能力を持っているのは、特殊な粘着性を持つ「足裏パッド」のおかげだ。研究チームは、静電接着と呼ばれるこの足裏パッドの原理を利用して、チーターのように素早く旋回できる昆虫スケールのロボットを開発した。
このロボットは、電圧をかけると曲がったり縮んだりする薄い層状の素材で構成。本体重量65mg。時速約2.4km相当の速さで平らな面を駆け抜け、体重約54kgの人間に踏まれても大丈夫な作りになっている。
2つの静電式足裏パッドに電圧をかけると、足裏パッドと表面間の静電力が増加し、足裏が表面にしっかりと固定され、ロボットの他の部分は足裏パッドを中心に回転する。
この2つの足裏パッドにより、ロボットの軌道をコントロールでき、一般的な昆虫(ゴキブリなどの多くの節足動物)を上回る求心力での旋回が可能になる。まるでチーターが逃げる鹿を追いかけるような俊敏な動きを実現する。消費電力が低いため、バッテリーやセンサーなどの電子機器搭載も容易だ。
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