実際に使ってみると、頭の中にあるストーリーやアイデアをスムーズに漫画として出力でき、自分だけの力では作れない作品が30〜40分程度で完成した。作成中には「文は短く簡潔に」「上から俯瞰する構図は状況説明がしやすい」など、ネーム作りのコツも表示されるため、見やすい作品が作れる。
一方で、表現したいストーリーやアイデアがない人にはあまり親切でないと感じた。サービス内では見やすいネームや、最後まで作り切るコツなどは教えてくれるが、面白いストーリーの作り方などは教えてくれない。後から調整できるとはいえ、脚本の時点ではイラストなどを確認できないため、絵からアイデアを出すのも難しい。
このため、筆者がいざネームを作ろうと思ってもストーリーが浮かばず、結局学生時代にウケた一発ギャグを題材にせざるを得なくなった。
World Makerがこういった人に親切ではないのは、集英社が明らかにしている通り、サービス自体が「絵は描けないけど漫画は作りたい人」に向けたものだからだろう。つまり筆者のように、漫画を作るモチベーションがあまり高くはないユーザーはターゲットではない可能性が高い。
ではなぜ、絵が描けなくて諦めていた人たちに漫画を作ってもらう必要があるのか。これは新人作家、中でもプロットなどを考える漫画原作者を発掘するためだと思われる。
実際、World Makerのオープンβテスト開始に併せ、集英社は9月22日から同サービスで作ったネーム限定の「漫画ネーム大賞」を始めている。賞金は30万円で、大賞の作品は宇佐崎しろさんなどイラストレーター2人が作画した上で少年ジャンプ+に掲載するという。
World Makerが公開されている漫画サイト「少年ジャンプ+」の編集部は新人作家の発掘に注力しており、過去にも「お仕事漫画賞」や「縦スクロール漫画賞」など、さまざまなテーマに沿った漫画賞を開催している。このように、World Makerは漫画原作など新たな才能を発掘する側面もあるようだ。
単に漫画を作るだけでなく、新人発掘の側面も持つWorld Maker。今後はユーザーの意見を基に、改善を進めていくという。機能拡充などが進み、新人発掘の戦略が奏功すれば、これまでにない漫画が世に出る時代が来るかもしれない。
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