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コロナ後に求められる鉄道の姿とは? 「レイアウトを変えられる列車」など英国の取り組みから考えるウィズコロナ時代のテクノロジー(2/3 ページ)

» 2021年10月04日 08時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

人流を可視化し、駅で密の発生を防ぐ

 しかし、鉄道の乗客が感染症のリスクにさらされるのは、列車の中だけではない。鉄道を利用する際には、必ず駅を通過する必要がある。そこには他の乗客がおり、大きなターミナル駅ともなれば、商業施設で働く人々なども合わさって大勢の人々が集まる。いたずらに恐怖をあおるつもりはないが、駅の構内でも新型コロナウイルスに感染する恐れがある。

 その解決策として日立ヨーロッパが提案したのが、人流を解析する技術を活用した密の把握と対応というコンセプトだ。日立製作所は以前から、特定の施設から都市全体に至るまで、広い空間の中における人の流れを把握する技術を研究してきた。

日立製作所の関連研究

 駅はまさにそうした空間の一つで、彼らの研究論文によれば、列車の管理システムや自動改札からの情報、監視カメラ映像など、既存の鉄道インフラから得られるビッグデータを基にして、電車内の混雑度合いから駅構内を歩く人の流れまで、多角的な分析と可視化が可能になっている。

 FOAKの提案では、駅構内での人流を可視化することにより、鉄道会社は密を生み出すボトルネックを取り除くなど、各種の対策を講じることができるとしている。

 他にも日立製作所では、収集された人流に関するデータに基づいて、人流をシミュレーションする技術も開発している。この技術では、実際の施設の構造を再現するだけでなく、「仮に施設のこの部分を別の形状にしたらどうなるか」といった仮定に基づくシミュレーションも可能になっている。

 建物の構造だけでなく、「利用客にどのような行動をしてもらうか(列の並び方をいわゆる「フォーク並び」にしてもらうなど)」といった条件設定も可能だ。

 もちろん駅構内での混雑を解消するのは、今回のパンデミック以前から重要な問題だった。しかしCOVID-19の流行という現実に直面したいま、混雑の解消は、公共交通システムに対する信頼の回復という大きな課題と直結している。FOAKが投資対象の一つに選んだのも、納得の判断といえるだろう。

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