2015年には、Inspire 1のカメラ部分を取り外して単体で利用できる「Osmo」を発売した。グリップ部にバッテリーを仕込み、ジンバル付きの小型カメラでハンディー撮影するという製品である。空撮でつちかったジンバルと小型カメラを、地上戦へ持ち込んだ。今に連なる「Osmo」の最初の製品である。
当時はすでにデジタル一眼で4Kを撮るという世界になっており、360度カメラも立ち上がっていた。そこにGoProとも違う小型カメラの世界観を持ち込んだ。
この頃から、カメラ市場はスマートフォンとの戦いに明け暮れることとなった。そしてスマートフォンにはできない撮影が可能なカメラが生き残ることになった。一方DJIは、スマートフォンと競合する道を選ばず、むしろこのブームを利用する方向にかじを切った。
Osmoのジンバル部分を再設計し、スマートフォンをカメラとして使うという発想で、2016年にスマホ用ジンバル「Osmo Mobile」をリリース、これもまたヒット商品となった。
一方プロ向けとしても、同年にジンバル部だけの製品を登場させている。「Ronin」はT字型の両脇を手で持ち、中央部にシネマカメラを吊り下げるというスタイルの、大型ジンバルだ。ただこの発想は、DJIが最初ではない。すでにデジタルシネマの世界では、米Freefly Systemsの「MoVI」というシステムが2013年に発売されており、2016年の段階ではシリーズで3モデルぐらいが展開されてきた。
ただ、ドローンで知られたDJIのジンバルがプロ機へ参入したというインパクトは大きく、またそれまでコンシューマー機も数多く出してきたところから、プロ機なのに多くのニュースメディアで取り上げられるなど、好調な滑り出しだった。また映画産業が大きくなり始めた中国で、積極的に採用され始めたのも大きい。
筆者は2017年に中国・北京で開催されたプロ向けの映像機器「BIRTV」の取材に出かけたが、DJIブースにドローンは積極的に展示されておらず、当時出たばかりの「Ronin 2」に若いカメラマン達が群がって、試用の順番待ちをしていたのが印象に残っている。
多くの製品は初号機から大成功を収めてきたが、唯一パッとしなかった製品があった。2019年に発売された、「Osmo Action」である。おそらく名前を聞いても、思い出せる人は少ないだろう。GoPro互換のようなアクションカメラで、実際GoProと同じマウントを備えていた。
当時のライバル、「GoPro HERO 8」と比べると、前面ディスプレイがカラーだったことがメリットだったが、翌年の「GoPro HERO 9」で前面ディスプレイがカラー化されたため、アドバンテージがなくなった。
2019年当時はアクションカメラ市場のシュリンクが伝えられており、多くのメーカーが撤退していた時期だ。そこに勝算ありとにらんだのかもしれないが、「DJIらしさ」がなかった。
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