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メガネ1つで誰でもVTuber、「VTUNER」の可能性 顔バレリスクなしも表情は硬め(1/2 ページ)

» 2021年12月02日 13時20分 公開
[谷井将人ITmedia]

 メガネを掛けるだけでVTuberになれる――そんなシステムを一般人でも当たり前に使えるようになった。ジンズは12月1日、同社のセンサー内蔵メガネ「JINS MEME」ユーザー向けに、3Dアバターをリアルタイムに操作できるアプリ「VTUNER」(iOS/無料)をリリースした。今回は趣味でこっそりVTuberをプロデュースしている記者が、アプリの操作感や活用可能性などをレビューする。率直な感想は「可能性は感じるがまだまだ頑張ってほしい」といったところだ。

photo VTUNERの操作画面

 JINS MEMEは、装着した人の視線の動きやまばたきの様子、姿勢などのデータを取得するウェアラブルデバイス。ジンズがヘルスケア用デバイスとして開発し、10月には第2世代を約2万円で売り出した。VTUNERはそんなJINS MEMEの新たな可能性を探るプロジェクトの一環としてエンターテインメント分野への展開を目指して開発されたアプリだ。

photo JINS MEME

 JINS MEMEに搭載されたジャイロセンサーや電位センサーで頭の傾きや視線の動きをデータ化し、アプリ上の3Dモデルに適用することで操作する。テロップを挿入する機能や背景の差し替え機能、表情や身動きなどのモーションをワンタップで再生する機能など、YouTube用動画の制作に役立つ機能も搭載している。配信機能は無い。

顔バレリスクゼロ

 アバター操作は簡単だ。アプリを起動してJINS MEMEをiPhoneとBluetooth接続すればもう使える。動かせるのは上体、頭、表情のみ。動かせる方向は前後左右の回転で、うなずく、横に揺れる、ふんぞり返る、お辞儀するといった動作ができる。手の動きや移動などは反映できないが、ゲーム実況や雑談、解説などの動画を作るには十分だろう。

photo 首を固定するモード

 何よりいいのが“顔バレ”のリスクがないことだ。Webカメラで顔のパーツを認識し、その動きをアバターに適用するタイプのソフトでは、配信中に操作ミスで“魂の人”の姿が映ってしまう事故も発生する。「顔バレしてからが本番」のような捉え方もあるにはあるが、炎上リスクにもなるため避けたい。

 JINS MEMEはカメラを使わないため顔バレのリスクが全くない。かなり安心して使えるシステムだ。キャラクターブランドを守る上ではかなりありがたい特徴といえる。ただし、スマホのアウトカメラでリアルタイムに撮影している映像をアバターの背景に適用できる機能もあるため、撮影中にスマホを落とすなどすれば顔が映る可能性はある。確実に固定できるようにするのをおすすめする。

 操作ミスでカメラがオンになる可能性も低い。カメラ映像を背景に設定するには3タップの操作が必要で、たとえオンになってもインカメラは適用しないため、最悪の場合でも顔はばれない。部屋の景色から身元を特定されるリスクはあるため、実写合成機能を使う予定がないならカメラにレンズカバーを着けるのがいい。

 VTUNER最大の特徴は身軽さだろう。撮影に必要なのはスマホとJINS MEMEだけなので、歩きながらでも収録できる。歩きながら撮影する必要がある場面は少ないが、VTUNERの登場により可能性が広がれば新しい表現や企画が生まれることもあるだろう。

表情と動きがぎこちない

 VTUNERではまばたきや視線の動きも取得して反映できるが、いかんせん表情が乏しい。「目は口ほ物を言う」とはいうが、目だけの動きでは感情を表現できない。実際には驚いていれば眉があがり、怒れば下がる。喜んでいれば口角が上がり、悲しんでいれば下がる。JINS MEMEでは口角や眉の情報は取得できないため、どうしても動きが固くなり、無表情になってしまう。

 そういうときは表情モーションを適用する。アプリ上の「Angry」「Fun」などのボタンを押すと、真顔の他にもさまざまな表情が出せる。VTUNER以外のアバター操作ソフトでも同様の機能があるものは多いが、よく出回っているWebカメラで顔をモーションキャプチャーするタイプのソフトであれば、口角や眉をキースイッチ無しで操作できるため、オペレーションの負担はより軽い。

photo 1タップでモーションを適用

 口のモーションには工夫が見られる。JINS MEMEでは口の動きを取得できないため、どんなに動かしてもアバターには反映されないが、どうやらマイクから取得できる音声を基に口を動かしているようだ。「あ」といえば大きく開く、「い」といえば歯を見せるなど母音を聞き分けて口の形を変える仕組みもある。

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