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群雄割拠の音楽ストリーミング、空席はもうない小寺信良のIT大作戦(2/5 ページ)

» 2021年12月15日 15時47分 公開
[小寺信良ITmedia]

ストリーミングの黎明期(2000〜2010年)

 ストリーミング事業において、現在もなおサービスが続いている老舗サービスの筆頭は、2000年に事業開始した米国「Pandora」ではないだろうか。巻き戻しや繰り返しといったインタラクティブ性がないので、どちらかといえばインターネットラジオに近い。日本では依然としてサービスしていないが、米国ではVUメーターのついた専用受信端末なども売られていた。

 今の形のようなサブスク型ストリーミングの元祖は、2001年にスタートした「Rhapsody」ということになるだろう。現在Rhapsodyは会社名としては残っているが、サービス名は2016年に「Napster」の名称を買い取っている。

 Napster自体はものすごく紆余曲折があるブランドで、なかなかその全容がつかめない。もともとはP2P技術を用いた音楽共有サービスだったが、2003年に倒産している。その後ソフトウェアベンダーのRoxioが資産を買い取り、当時米国でサービスしていたストリーミングサービス「Pressplay」の事業も買い取って、2003年に「Napster 2.0」としてストリーミング事業に進出した。日本でもサービスインしたので筆者も加入したが、2010年に終了、本国でも2011年に事業終了している。従って現在のNapsterは、オリジナルとは全く無関係である。

photo 現在のNapster

 2004年に台湾でサービスインした「KKBOX」もかなり長い。その後2010年にKDDIが資本参画し、2011年に「LISMO Unlimited」として日本でサービスを開始した。2013年に名称を再び「KKBOX」に改め、現在もサービス中である。

 2007年にはフランスで「Deezer」がサービスインしている。CD同等のロスレスでの高音質配信を売りにしており、2017年には日本でもサービスを開始しているので、これはご存じの方も多いだろう。

 2008年にはスウェーデンで「Spotify」が誕生している。Spotifyの立ち位置は特殊で、当時EUで大問題になっていた音楽の海賊版サイトへの対抗という意味合いが強かった。タダでデータがやりとりされるより、ストリーミングで非コピー、少しでもお金が入ったほうがマシ、というコンセプトだった。2011年には米国でもサービスを開始した。

 特にこの2008年は、世界中で海賊版対策のためにさまざまな転換が行われた年である。AppleのiTunes Music(当時)がDRMなしでダウンロード配信するという方向に舵を切ったのもこの年だ。またAmazonのダウンロードサービス、Amazon MP3もDRMフリーでサービスを開始している。利便性が海賊版を駆逐できるか、そうした社会実験がスタートした年だったといえる。

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