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群雄割拠の音楽ストリーミング、空席はもうない小寺信良のIT大作戦(3/5 ページ)

» 2021年12月15日 15時47分 公開
[小寺信良ITmedia]

紆余曲折乱立時代(2011〜2014年)

 個人的には、2011年のNapster終了をもって、ストリーミングは次のステップに突入したように感じられる。同年には「Amazon Cloud Player」と「Google Play Music」、2012年には「iTunes Match」がスタートしている。

photo 現在も続くiTunes Match

 Google Play Musicはストリーミングサービスでもあったが、この3つに共通していたのは、クラウドに手持ちの音楽を預かる「クラウドロッカーサービス」の意味合いが強かったところだ。ストリーミングのタイトルがマイナーな曲までカバーできていない中、手持ちの音楽ファイルもローカルではなくクラウドからどこでも聴けたほうが便利ではないか、というメリットを前面に打ち出した時代である。

 特に面白かったのが、iTunes Matchだった。手持ちの楽曲とiTunes Musicの楽曲をフィンガープリントでマッチングさせ、同じものがクラウドにあればアップロード不要で聴けるという、ライセンス交換のような仕組みだった。ただ、全然違う曲とマッチングされるなどのトラブルもあった。

 Amazon Cloud Playerはその後Amazon Musicと名を変えたが、2019年にサービスを終了している。Google Play Musicは2020年に「YouTube Music」へ吸収された。ストリーミングサービスの台頭により、クラウドロッカーサービスは役割を終えたように見えるが、iTunes Matchはサービス継続中で、YouTube Musicでも続いている

 2012年には、ソニーが「Music Unlimited」を、ドコモが「MUSICストア セレクション」(のちのdミュージック)と「dヒッツ」をスタートさせた。2013年には「レコチョクBest」もスタートしている。

 2011年に「LISMO unlimited」がスタートしているように、この頃はワールドワイドでもスマートフォンとフィーチャーフォンの出荷台数が入れ替わっている。フィーチャーフォン向けダウンロードサービスで大きな利益を上げてきたキャリアが、次はスマートフォン向け事業としてストリーミングサービスを開始するのは、必然であった。

 一方でソニーの「Music Unlimited」は、スマホだけでなく、PC・タブレットでも、PlayStationでも利用できた。ただ日本でのサービスイン前年、すなわち2012年に当時のソニーCEO平井一夫氏に立ち話程度で聞いた際には、邦楽がなかなか集まらず苦労しているということだった。レコード会社としては、レコチョクとしてdミュージックもdヒッツも立ち上げ、翌年には自らもレコチョクBestで参入が決まっている中、競合サービスへの楽曲提供に難色を示すのも無理はない。

 2014年には「Amazon Prime Music(現在はAmazon Music Prime)」と、TIDALがスタートしている。

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