ITmedia NEWS > 科学・テクノロジー >
ニュース
» 2022年01月05日 08時00分 公開

頭の形で個人認証できるヘルメット、立命館大などが開発 工事現場での作業員識別などに活用Innovative Tech

立命館大学と科学技術振興機構の「さきがけ」の研究チームは、ユーザーの頭部の形状を取得し、登録したユーザーであるかどうかを機械学習で判断する、圧力センサー搭載ヘルメットを開発した。

[山下裕毅,ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 立命館大学と科学技術振興機構の「さきがけ」の研究チームが開発した「User Identification Method based on Head Shape Using Pressure Sensors Embedded in a Helmet」は、ユーザーの頭部の形状を取得し、登録したユーザーであるかどうかを機械学習で判断する、圧力センサー搭載ヘルメットだ。

プロトタイプの外観

 ヘルメットには、産業用保護ヘルメットやオートバイ・自転車用ヘルメット、スポーツ用ヘルメット(アメリカンフットボール用、野球用、アイスホッケー用など)、軍用/警察用ヘルメットなど、さまざまな種類がある。

 ヘルメットは頭部を守るだけでなく、かぶることで名前や仕事の分担などをヘルメットに表示して、知らない人同士を識別するのに便利だ。これらの情報は、ヘルメットに直接書き込んだり、識別用のステッカーを貼り付けたりする場合が多い。そのため偽装も容易にできる。

 この研究では、ヘルメット内に圧力センサーを設置し、頭部の形状に基づいてユーザーを自動識別する手法を提案する。プロトタイプにはフルフェイスヘルメットを使用し、頭部や側頭部に当たるように32個の圧力センサーを内側に搭載。この方法では、ユーザーの識別と個人認証の2つを行う。

圧力センサー32個の配置場所
プロトタイプの内部

 ユーザーの識別では、1つのヘルメットを複数人で共有することを想定しており、ユーザーの圧力センサーデータをあらかじめ登録し、ヘルメットをかぶった人が誰かを識別する。登録のない人がヘルメットをかぶることを考慮していないため、非登録者がかぶった場合、識別結果は登録者の中で最もデータが近い人となる。

 ユーザー識別では、学習データから抽出した特徴量からサポートベクターマシン(SVM)を使って認識モデルを構築し、未知の登録者の入力データの特徴量から識別結果を出力している。 

ヘルメット側面のLCDディスプレイに名前を表示する

 個人認証では、ヘルメットをかぶっている人が正しい人かどうかを判断する。あらかじめ、その人の圧力センサーデータのみを登録し、かぶった際に真偽判定する。もしくは複数人で1つのヘルメットを共有する場合は、ヘルメットをかぶるときにあらかじめ決めておいたIDを入力し、対応する圧力センサーデータと合致すると認証する。

 この場合、IDと圧力センサーデータが一致しなければ頭の形状が異なる侵入者と判断するため、万が一IDが漏れても問題は生じない。個人認証では、未登録者を含むユーザーの学習データと入力データの間の距離を計算し、その距離がしきい値以下であればユーザーを認証し、そうでなければユーザーを拒否する。

 プロトタイプのヘルメットには、識別結果に基づいてユーザーの名前やその他の情報を表示するディスプレイが搭載されているため、他人のヘルメットを使用しても、誤った情報がヘルメットに表示されることはない。

 ユーザー識別のもう一つの利点は、データのアノテーションだ。カメラやアイトラッカー、加速度計など、ヘルメットやユーザーの体に取り付けたセンサーが収集したデータには、ユーザーのIDが自動的にアノテーションされる。

 またGPSモジュールやアンテナを取り付けてユーザーの位置を特定することで、作業者の名前や位置をリアルタイムに把握することができ、現場での全体的な状況を監督者がよりよく把握できるようになる。

 その他の活用シナリオとしては、立場や権限によって入室が制限される部屋の鍵としての利用が考えられる。ヘルメットとバイクを事前にペアリングしておき、乗車時にユーザー認証を行いバイクの盗難を防ぐことも可能だろう。

 被験者9人で行った実験では、ユーザー認証は、32個のセンサーで100%の精度が得られた。そのため、センサーの数を減らすことで精度がどのように変化するかを検証した結果、100%の精度が得られる最小のセンサー数は5個と分かった。

 生体認証のエラー率である、等価エラー率(EER)は9人の被験者のうち4人が0.012以下であり、認証時の平均EERは0.076であったことから、この手法がユーザー識別法として有効であることを示した。

Source and Image Credits: Atsuhiro Fujii, Kazuya Murao, User Identification Method based on Head Shape Using Pressure Sensors Embedded in a Helmet, Journal of Information Processing, 2021, Volume 29, Pages 610-619, Released October 15, 2021, Online ISSN 1882-6652, https://doi.org/10.2197/ipsjjip.29.610



Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.