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VRのキャラクターに「腕グイ」されるデバイス 政大や京大などが開発Innovative Tech

» 2021年12月17日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 国立政治大学や京都大学、米ポモナ・カレッジ、米カリフォルニア大学デービス校の研究チームが開発した「GuideBand: Intuitive 3D Multilevel Force Guidance on a Wristband in Virtual Reality」は、VR中でユーザーの腕を引っ張る触覚ウェアラブルデバイスだ。

 片方の前腕に装着する設計で、デバイスの中心から全方位に外側へと腕を引っ張る力覚フィードバックを提供する。VR内のナビゲーションやバーチャルキャラクターに引っ張られる体験などに活用できる。

前腕部に装着するGuideBandプロトタイプ

 このデバイスは、3つのモーターを搭載するリストバンドで構成する。中央には直接腕を引っ張るバンドを整備し、1つのモーターでワイヤを引っ張り外側(x軸)へと腕を誘導する触覚を提示する。

 バンドを引っ張る動きは、上下左右、前後だけでなくバンドを中心とした全方位から実行可能。残りの2つのモーターを使って前腕に垂直なy軸に沿った回転方向、前腕に平行なz軸に沿った湾曲方向を制御することで、全方位からの引っ張りを実現する。

赤がx軸、青がy軸、緑がz軸に作用する

 さらに方向を制御するだけでなく、力加減を調整できる多段階式も取り入れており、VR内で誘導する場合にその距離感を表現することなどに使える。大掛かりなデバイスではあるものの、本体の重さは225gと比較的軽く仕上げている。

ハードウェアの構成図

 VR内で誘導するユーザー実験では、振動ベースの触覚デバイスと今回の力覚ベースのデバイスを使い、比較する検証を行った。結果、一部のユーザーから、振動ベースの触覚デバイスだと振動が気になり没入感や臨場感が阻害されたと報告があったが、力覚ベースのデバイスだと誰かに手を引っ張られる実感があって臨場感があったと報告された。

Source and Image Credits: Hsin-Ruey Tsai, Yuan-Chia Chang, Tzu-Yun Wei, Chih-An Tsao, Xander Chin-yuan Koo, Hao-Chuan Wang, and Bing-Yu Chen. 2021. GuideBand: Intuitive 3D Multilevel Force Guidance on a Wristband in Virtual Reality. Proceedings of the 2021 CHI Conference on Human Factors in Computing Systems. Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, Article 134, 1–13. DOI:https://doi.org/10.1145/3411764.3445262



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