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タイガーの炭酸ボトル、開発のヒントはペットボトルだった

» 2022年01月19日 17時15分 公開
[ITmedia]

 タイガー魔法瓶が1月21日に発売する「真空断熱炭酸ボトル」は、国内メーカーで唯一炭酸飲料を持ち運べる真空断熱ボトルだ。11日の製品発表以来、多くのメディアに取り上げられ注目度も上がっている。しかしなぜ今まで炭酸対応のボトルを出していなかったのか。

「真空断熱炭酸ボトル」。強炭酸のソフトドリンクやビールなども保冷しながら持ち運べる

 タイガー魔法瓶は1923年の創業当初から魔法瓶を手がけているが、これまで炭酸飲料を入れることは推奨していなかった。タイガー魔法瓶開発第3チームの中井啓司マネージャーによると「炭酸の気化によってボトル内の圧力が上がり、栓やふたが開かなくなったり、開栓時に中身が吹き出したりする可能性があります。それを防ぐ栓の構造は確立できていなかった」という。

 しかし愛用者から炭酸飲料をボトルに入れたいという声が根強く、社員からも炭酸飲料対応を求める声が上がっていた。このため2年ほど前に一念発起。「新しいボトルを作ろう」をテーマに開発を始めた。

 問題の栓構造には身近なヒントがあった。「炭酸飲料のペットボトルからヒントを得て、栓のねじ部分2カ所に縦の溝を入れました。すると栓を回した時、栓が外れる前に内部の炭酸ガスが抜けます」と中井さん。ゆっくりと回すと炭酸ガスが抜ける専用の栓ができた。

炭酸飲料のペットボトル。ねじを切った部分に炭酸ガスを逃がす秘密があった
真空断熱炭酸ボトルの仕組み(タイガー魔法瓶のWebサイトより)

 炭酸でボトル内の圧力が高まった場合を考慮して栓に安全弁も設けた。普段は塞がっているが、異常な圧力がかかると“つまようじ”ほどの小さな穴となり、圧力を逃がす仕組み。液体が漏れることはないという。中井さんは「この構造を開発するまでに500回を超える実験を行いました。試験では担当者が吹き出す炭酸水を何度も浴びました」と振り返る。

 真空断熱ボトルを使う大きなメリットは保冷機能だが、冷たい状態を維持することでペットボトルや缶に比べて炭酸の気化も抑えられる。真空断熱炭酸ボトルは最近増えた「強炭酸」飲料にも対応できるという。

 もう1つ炭酸が抜ける原因として、ボトル内部にある目に見えない微細な凹凸に炭酸水がぶつかって気化が進むことが挙げられる。そこでタイガー魔法瓶は以前からあった独自の研磨技術を採用。魔法瓶の内壁を「極限まで磨き込む」ことで凹凸をなくし、炭酸の気化を抑えることに成功した。

 炭酸ボトルのラインアップは一般的なペットボトルと同じ0.5Lから大容量の1.5Lまで4サイズ。1.2Lや1.5Lといった大容量の製品を設けたのは、「複数人でのアウトドアやキャンプ需要、また昨今増えているクラフトビール店などのテイクアウトを想定したため」だ。

 カラーは銅をイメージした「カッパー」、緑の「エメラルド」、黒い「スチール」の3種。成形時にスピニング加工を施して「見た目以上の軽さを実現した」という。価格はオープンプライスで、店頭では6000円から7500円前後(税込)になる見通し。

炭酸ボトルの開発チーム。左から開発第3チームの中井啓司マネージャー、開発第3チームの林真治さん、真空断熱ボトルブランドマネージャーの南村紀史さん、商品企画第1チームの高田愛子さん

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