芹澤CEOによれば、ユーザーがSmartHRを解約する理由は、大きく分けて(1)ツールを使いこなせない、(2)企業の統廃合などで利用が継続できない、(3)経費削減などを目的に運用担当者外からの指示があった──に分類できるという。
SmartHRが注目するのは、このうち「ツールを使いこなせない」という意見だ。「他の理由はコントロールできないが、ツールの問題であれば対応できる」と芹澤CEO。使いこなせないという声に優先して対応することで、対応すべき問題とそうでないものを切り分けているという。
「自分たちにどうにもできない部分にリソースを集中させても効果は薄い。それよりは、対応できる問題を抱えた人からきちんと原因を聞く方が大事」
もう一つは、解約率の重要性を、グロスレベニューチャーンレートをKPIに持つチームだけでなく、他のチームにも意識してもらうことだ。SmartHRにおいて解約率をKPIに持つのはカスタマーサクセス部門だ。しかし芹澤CEOは、一部門だけが指標達成に向けて努力するのでは、いくら対応すべき課題を洗い出せても、解約率を抑えられないと話す。
「『使いこなせない』という理由の裏には、開発部門が作ったプロダクトが使いにくい、顧客の欲しいものになっていない、セールス部門がマッチしない企業に売ってしまっている、カスタマーサポートのクオリティーが低いなど、さまざまな要素がある。カスタマーサクセスだけに任せては、こういった課題は見えてこない」
こうした事態を避けるため、SmartHRでは社員に向け、カスタマーサクセス部門以外の社員にも解約率の重要性を定期的に発信している。例えば週次で行う全社会議では、解約率、LTV(Life Time Value、顧客生涯価値)、顧客獲得単価といった指標、商談のログ、失注や受注の状況、クライアントの要望を全社員に公開しているという。
「チャーンレートの目標値を達成するには、全社員が動いていくことが重要。例えば解約される可能性が高いにもかかわらず、目先の売上を上げるために無理やり契約するということは好ましくない。SaaSビジネスのセオリーを理解したうえで、各KPIを設計することが必要。そのためには、ビジネスサイドと開発サイドの両方で情報が均一であることが求められる」
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