「誰の課題を解決するかという仮説を立てないまま『SaaSをやりたい』という始め方で製品を作り、身内に使ってもらうだけでは、売り上げなどの指標は低いまま。これまでの売り切り型モデルなら一度売ってしまえば元が取れる可能性もあったが、サブスクリプションではそうもいかない」
B2B SaaSによくある失敗について、スタートアップ向けコンサルティングサービスを提供しているユニコーンファーム(東京都渋谷区)の田所雅之CEOはこう話す。SaaS企業を中心にこれまで500社以上の立ち上げを支援してきた田所CEOによると、企業の中には、事業を立ち上げたはいいものの、結局は身内の外に利用が広がらず、ビジネスとして成功しない例もしばしばみられるという。
「大事なのは、ユーザーが持つ課題の仮説を立てること。 SaaSの場合、そのためにはユーザーの業務プロセスを把握することが重要」と田所CEO。ユーザー課題の正しい見極め方を、IT製品口コミサービス「ITreview」を運営するアイティクラウド(東京都港区)が開いたオンラインイベント「SaaS MARKETING FES 2021」(12月15〜16日)で解説した。
「特に業界特化型の『バーティカルSaaS』の場合、対象となる企業がレガシーなシステムを使っていることも多く、そもそもユーザー自身が現状のプロセスを捉えきれていないこともある。ここをきちんと把握することが大事」と田所CEOは話す。
実際、9月に11億円の資金を調達したガラパゴス(東京都千代田区)などには、こういった課題の洗い出しを徹底するようアドバイスしたという。同社はAIを活用してバナー広告やランディングページの作成を円滑化するSaaSを提供するスタートアップだ。
ガラパゴスのサービスの場合、対象ユーザーはデザイナーであると仮定。その上で、仮説を基にデザイナーの業務プロセスを図式化し、約20人のデザイナーにヒアリングして精度を高め、どこにユーザーの課題があるか洗い出してからサービスを開発するようアドバイスしたという。
「自分たちにとっての初期ユーザーが誰なのか、つまりどの戦場を選ぶのか考えるのがまず重要。入り口となる市場での局地戦に勝つことがポイントで、全面戦争は必要ではない」(田所CEO)
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