初めまして。この度連載を書かせていただくことになった渡辺です。普段はITベンチャーの経営をしていますが、もともと大の車好きということもあり、趣味が高じて自動車関連のアプリ開発などを手がけています。
自分の愛車に加えて仕事柄さまざまな車に乗る機会が多く、自動車という工業製品のUI/UXについて思うところがあります。この連載ではそうした話を語っていきますのでお付き合いください。なお、自動車メーカーや輸入車インポーターと業務上のお付き合いがありますが、ここではそれらの企業とは無関係な、あくまで個人的な意見となりますのでご了承ください。
「コクピットドリル」という言葉をご存じでしょうか。
初めて乗る車のドライバーシートに座って、一通り操作を確認する作業を指します。愛車を購入した場合であれば、ディーラーでクルマの引き渡しが行われる際にセールスパーソンから説明を受けることになります。
このコクピットドリルでは、運転の基本操作に関わる部分に加えて、その車種固有の機能や注意事項を教えてもらうわけですが、最近の車は運転の基本操作以外の部分が多くなっているので短時間では説明しきれません。
いきおいADAS(先進運転支援システム)やインフォテインメント(Infotainment)など細かい機能の説明は省かれ「マニュアルを読んでおいてください」と言われるのがおちでしょう。実際、セールスパーソンも最近のコネクテッドカーの通信サービスをはじめとした高度な機能を理解していないことが多いです。
自分が購入したマイカーなら分厚いマニュアルを参照して習得していくこともできますが、レンタカーやシェアカーではどうでしょう?
そもそも車内にマニュアルがあるかどうかも分かりませんし、親切なセールスパーソンが居ないどころか、無人の駐車場でいきなり運転しなければならないシチュエーションが普通です。
世界中、どこでクルマに乗ってもステアリングとペダルだけの同じ操作だった時代はすっかり過去になってしまいました。
ADASを含むクルマの操作系(UI/UX)はここ5年くらいで大きく変わってきたので、ちょっと古いクルマしか乗ってこなかったシニアドライバーは言うに及ばず、運転経験の少ないペーパードライバーや初心者ドライバーは面食らうことでしょう。
一方、自動車業界は100年に一度の大変革期といわれています。もっとも自動車が量産されるようになって100年ちょっとなので、初めての大変革で揺れているわけですね。
大きなテーマは2つ。「電動化」と「自動運転」です。CASE(Connect、Autonomous、Shared & Sevices、Electric)でいうキーワードの残りの2つ(コネクト、シェア&サービス)も重要ですが課題が比較的少ないのでここでは省略します。
電動化、つまりEVをめぐる狂騒曲は激しさを増しているので、みなさんも毎日のようにメディアでご覧になっているでしょう。
その震源はTesla(テスラ)。
イーロン・マスク率いるEV専業メーカーのTeslaが台風の目として業界を席巻しているのはご存じの通り。
ついに2021年12月にはあのトヨタをも動かし、大きくEVにシフトする長期戦略を発表をしたのは記憶に新しいところ。先日は、ルノーを含む日産三菱連合もEV戦略を発表したばかりです。
TeslaはBEV(バッテリーEV)専業メーカーというだけでなく、これまでのものづくり主体の自動車メーカーとは異なり、ソフトウェアファーストの製品戦略が際立っています。OTA(Over The Air)で機能がアップデートされるところなどまさにスマホ的。
それを実現するアーキテクチャから、オンラインオンリーの販売方法までこれまでの自動車の概念にとわれれない革新性はまさにAppleに匹敵するといえるでしょう。
例えば、EVと並んで業界のテーマとなっている「自動運転」についても、先頭を切っており、時に死亡事故が起きてもその進化を止めない姿勢は批判もされますが、他のメーカーでは真似のできないチャレンジだと思います。
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