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DAZN大幅値上げの背景 狙いは「会員数安定」路線へのシフトチェンジか(1/3 ページ)

» 2022年02月01日 13時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 会員制のスポーツ専門映像配信サービス「DAZN」が大幅な値上げを行った。

 Jリーグの中継を独占している他、プロ野球からF1まで、多くのスポーツを中継、スポーツファンの依存度が高いサービスだけに、その影響も大きい。

 一方で、月額ではなく「年額」支払いにすると割引率が大きくなったり、KDDIが通信費とセットで割安になる「使い放題MAX5G/4G DAZNパック」を提供していたりと、「賢く立ち回ると値段を下げられる」要素が散見されたりもする。

 これはどういう戦略に基づくものなのか、分析してみよう。

「DAZN」のトップページは2月22日からの新料金が案内されている

5年間で急成長の一方、世界中で一気に大幅値上げ

 DAZNは、2016年にサービスを開始した映像配信サービスだ。ご存じのようにスポーツに特化しており、本社は英・ロンドンにある。

 当初はB2Bも含めた事業を手掛ける「パフォーム・グループ」の1サービスだったが、パフォーム・グループが2019年に構造改革、B2B向けのスポーツメディア事業を米・シカゴのスタッツ社に売却して「スタッツ・パフォーム」と、DAZNを軸にした「DAZNグループ」に分かれた。以後日本でも、DAZN Japanがサービスを運営している。

 同社はサービス開始直後から、多数の投資を行い、スポーツのジャンルを問わず、配信権の獲得に努めてきた。特に大きいのは、サービス開始直後の2016年7月に、Jリーグとの間で、2017年度から10年間に渡る放映権契約を締結したことだろう。契約金が約2100億円と巨額であることも注目された。

 結果的に、2016年からの5年あまりで配信コンテンツ数は、グローバルで8.5倍、日本でも8倍に増えたという。

 一方で、DAZNは「コストをかけすぎて苦しんでいるのでは」という指摘が以前からあった。

 「配信コンテンツが増えている」とする一方、UEFAチャンピオンズリーグやヨーロッパリーグの配信権を手放し、2020/21シーズン途中で配信を打ち切っている。今後同様のことが起きる可能性も否定はできない。

 そんな中で、DAZNは値上げを行う。月額料金は2月22日以降、1925円から3000円へと、1000円以上の値上げになる。値上げするのは日本だけではなく、米国は9.99ドルから19.99ドルへ、イタリアでも9.99ユーロから29.99ユーロへと、全世界的に「大幅値上げ」を行っている格好だ。

 DAZN側は「さらなる成長のためにはこのタイミングでの値上げが必要だった」とコメントしている。

 ただ、DAZNは2019年の組織変更以降、非上場企業であるので業績などの細かな数字を公開していない。結果として、全世界での値上げが「投資回収に入った」「経営体制に課題があるのでは」という懸念を招く結果にもなっている。

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