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DAZN大幅値上げの背景 狙いは「会員数安定」路線へのシフトチェンジか(2/3 ページ)

» 2022年02月01日 13時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

より「年間契約」しやすい料金体系になった背景

 実際DAZNの内情がどうかはわからない部分が大きい。他の映像配信と異なり、コロナ禍ではプロスポーツ自体にマイナスの影響があったことも事実で、単純に追い風だったとは言えないだろう。

 今回の値上げに合わせ、DAZNは年額での割引を強化している。

 一括払いの「年間プラン」料金も1万9250円から2万7000円に値上げされるが、この料金だと、1カ月当たりの利用料は2250円になる。従来は「年間プランだと2ヶ月分安くなる」計算だったが、値上げ後は「3ヶ月分安くなる」ことになる。

 また、年間中途での解約はできないものの、毎月の支払いが2600円になる年間契約の新プランも用意された。

 これは会員サービス運営上の一般論だが、月額サービスよりも「年額」サービスを推す場合、経営指標として「会員数の安定」を軸に据えている場合が多い。月額だと「必要な時だけ加入して、不要な時期には止める」使い方がしやすいが、年額の場合、考え直す機会は1年に1度しかやってこないことになり、月次での会員数増減が少なくなる傾向にある、といわれている。経営上、手元に入ってくる収入の計算がしやすくなるのだ。

携帯電話事業者など「パートナー戦略」は安定に不可欠

 現状、多くの映像配信サービスが「自社直接の加入」だけでなく、ビジネスパートナーを介した加入の開拓に積極的になっている。理由は、新しい販路であるだけでなく、そうしたビジネスパートナー経由の販売は「解約率が低い」からである。

 KDDIは携帯電話事業・auの新料金施策として、DAZNの視聴料をセットにしたプランを2月下旬より開始する。

 DAZNの視聴料とデータ使い放題のプランがセットになった「使い放題MAX5G/4G DAZNパック」は月額8338円。「使い放題MAX」は7238円なので、DAZNが実質毎月1100円で視聴できる計算になる。なんと1900円引きだ。

auの「使い放題MAX5G/4G DAZNパック」

 さらには、DAZNを含め、NetflixやYouTube Premiumなど、7つのサービスがセットなった「使い放題MAX 5G ALL STAR パック」は月額9980円である。7つのサービスは合計9248円の利用料に相当するが、それが実質2750円で使えることになる。DAZN単体だといくら割引になっているのか計算することすら難しい。

 こうしたパック料金は、携帯電話側の料金プランを見直す時でないと切り替えないので、サービス側から見ると「解約のタイミングが非常に少ない」ものになる。携帯電話事業者側としても、スマートフォン本体での値引きが封じられている今、「サービス料金でお得感を演出する」ことが重要になっている。

 おそらくDAZNは多少のディスカウントを行ってKDDIにサービスを提供しているのだろうが、KDDI側も利益を相当に削って提供しているのは間違いない。わかりやすく「Win-Win」な関係と言える。

 これ以外にも、DAZNはJリーグや各チームとの「年間パス」も用意している。こちらも、料金が安くなりやすいだけでなく、ファンが契約してくれるので、安定した「年間契約者」獲得には有効だ。

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