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ソニーがBungie買収で手に入れたかった「とあるノウハウ」 勢い増すゲーム企業の買収合戦(2/3 ページ)

» 2022年02月03日 13時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

ソニーがBungieに期待する「ライブゲーム・サービス」のノウハウ

 SIEはなぜBungieを買収したのか?

 マイクロソフトによるActivision Blizzardの買収に対抗し……と言及されることが多いのだが、この辺はちょっと微妙ではある。

 この種の買収交渉には長い時間が必要なので、当然ながら、Activision Blizzard買収の発表から動いた話ではなかろう。Activision Blizzardの話があったので発表タイミングが早まった可能性はあるが、直接的な「対抗」なのはそのくらい。SIEとしてずっと進めてきた「買収戦略」の一環なのだろう。

 ソニーグループ・代表執行役副社長兼CFOの十時裕樹氏は、2月2日に開催した、ソニーグループ・2021年度第3四半期決算説明会の中で、Activision Blizzard買収の影響についての筆者からの質問に、「まだ終わった話ではなく、どういう変化が起きるかも読みづらいため、他社のM&Aの影響について、予断を持つのは避ける」とコメントした。

 その上で、Bungieの買収について、3つの柱を提示した上で、特に「ライブゲーム・サービスへの期待」を語る。

ソニーはBungie買収について3つの柱がある、と説明する

 ライブゲーム・サービスとはいわゆるネットワークゲームのこと、と考えていただいてかまわないが、中でも多くの人が同時に参加し、楽しむタイプのものを指す。

 以下のグラフは、ソニーグループ・2021年度第3四半期決算説明会の中で示されたデータだ。

2014年以降、世界全体でのゲームビジネスの売上金額に関する統計。市場全体の伸びを「ゲームのアドオン」が牽引している。

 全世界で消費者がゲーム関連のビジネスに投じた金額をまとめた統計だが、2014年以降、市場全体は12%成長したなかで、「ゲームのアドオンコンテンツ」は15%成長しており、実質的に、「ゲームをプレイするためにアドオンに投じたお金」が、市場の伸びを支えているのがわかる。この統計はモバイル・PC・家庭用ゲームなどすべてを合計した額、という前提で見ると、納得していただきやすいのではないかと思う。

 Bungieの現在の主力商品は「Destiny」シリーズであり、特に現在展開中の「Destiny 2」は基本プレイが無料、追加コンテンツやゲーム内通貨に課金する形になっている。まさに「ライブゲーム・サービス」であり、その運営を長く続けているだけに多くのノウハウもある。

 十時氏は2025年までの目標として、「自社制作ゲームの売上を現在の2倍以上に拡大すること」「10タイトル以上のライブゲーム・サービスを立ち上げること」を掲げている。

 オンラインゲームの収益とそのノウハウ、ユーザーベースの獲得、という流れだと分析すれば、Activision Blizzardの買収も似た目的を持っているわけだが、ソニーとBungieは、目的をより明確に示したといえるだろう。

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