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相手は本物のCEO? ビデオ会議やコラボツール悪用の成り済ましにFBIが注意喚起この頃、セキュリティ界隈で

» 2022年02月25日 08時00分 公開
[鈴木聖子ITmedia]

 勤務先のCEOからメールでオンライン会議への出席を促された。会議の画面に映っているのはCEO本人。その指示に従って送金したところ、詐欺グループの口座に振り込んでしまった――。コロナ禍で普及したオンライン会議ツールやコラボレーションツールが、そんな形で悪用されるケースが増えているという。

 米連邦捜査局(FBI)は2月16日、オンライン会議プラットフォームを利用する新手の「ビジネスメール詐欺」の手口にだまされないよう、企業や組織に注意を呼び掛けた。

 ビジネスメール詐欺といえばこれまでは、経営者や取引先の担当者に成り済まして電子メールで相手をだまし、送金を促すやり方が主流だった。しかしFBIによれば、2019年から2021年にかけてはオンライン会議プラットフォームを悪用したビジネスメール詐欺について、インターネット犯罪苦情センター(IC3)への報告が増加したという。

FBIが掲載した注意喚起

 例えばCEOやCFOを装う手口では、乗っ取った電子メールアカウントから従業員にオンライン会議への出席を指示して、会議の画面にはCEOの静止画像を映し出す。音声はなし、あるいは本物そっくりに捏造した「ディープフェイク」の音声を利用して、ビデオや音声がうまく動作しないともっともらしい理由をつけ、チャットや事後のメール経由で送金を促す。

 あるいは従業員の電子メールアカウントを侵害してその会社のオンライン会議に侵入し、会社の日常業務に関する情報を収集することもある。

 CEOなど経営者の電子メールアカウントを乗っ取っる手口では、CEOがオンライン会議中で自分のコンピュータからの送金ができないと称し、従業員にメールで送金を指示するケースもあった。

社内チャットでマルウェア感染

 一方、オンライン会議ツールと並んでテレワークに欠かせない存在となったコラボレーションツールにも、攻撃者は狙いを定めている。

 セキュリティ企業Check Point傘下の米Avananは、「Microsoft Teams」に侵入してチャットに悪質ファイルを添付し、マルウェアに感染させる攻撃が、2022年1月以来、何千件も観測されていると伝えた

Avananが掲載した記事

 この手口では、同僚などとやりとりするチャットに添付した実行可能ファイル(.exe)をエンドユーザーがクリックすると、トロイの木馬を介してマルウェアがインストールされ、コンピュータが乗っ取られるという。

 攻撃者はまず、フィッシング詐欺や電子メールアカウントの乗っ取りなどあらゆる手段を使って狙った組織のTeamsアカウントに侵入する。いったん侵入してしまえば、CEOであれ、CFOであれ、ITヘルプデスクであれ、簡単に他人に成り済ますことができるとAvananは指摘する。

 「ほとんどの従業員は、電子メールの相手を確認するトレーニングは受けているが、Teamsで会話している相手の名前と写真が本物かどうかを確認する方法はほとんど知らない」(Avanan)

 そうした相手とのチャットにファイルが添付されていれば、ユーザーは深く考えることなくクリックしてしまいかねない。しかもデフォルトのTeamsは防御が手薄で、悪質なリンクやファイルのスキャンは限られるという。

 Teamsなどの社内チャットでは、メールではまずやりとりしない情報が共有されることもある。Avananによると、病院の医師同士で患者の診療情報をTeamsで無制限に共有していた実例もあった。

 Teamsの利用が増えるほど、悪用を狙った攻撃は増えるとAvananは予想する。被害を防ぐためには、全てのコミュニケーション手段を網羅するセキュリティ対策が求められるとしている。

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