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初音ミクが生きてきた16年を振り返る 究極のバーチャルシンガーはどこがすごかったのかヤマーとマツの、ねえこれ知ってる?(2/5 ページ)

» 2022年03月02日 18時54分 公開

初音ミクはデイジーデイジーの歌をうたうか?

ヤマー そういうことでしたか。番組では、ベル研だったかな? 世界初の歌声合成のあと、ヤマハで進められた「デイジー」という歌声合成プロジェクトを紹介してました。

マツ ベル研のはDaisy Bellでした?

ヤマー ですです。

マツ 初音ミクとDaisy Bellとの関係については、2007年にブログを書いてます。

 デイジーデイジーの歌こと「Daisy Bell」。もともとは、1961年にIBM 704というコンピュータで歌わせたもので、それをサンプリングしてソフトウェア音源にした製品も出ています。これのレビュー記事も書きました。

 この曲は、映画「2001年宇宙の旅」で、HAL9000が最期に歌ったことで、広く知られるようになりました。僕も、初音ミクでカバーしたことがあります。

ヤマー おおおおすごい。今更ですけど、マツさんボカロPだったんですね。

マツ P名もありますw

ヤマー ほんとだ、ニコニコ大百科に記事がある……。

マツ NHKの番組では他にどんなトピックがありました?

ヤマー 米津玄師やYOASOBI、ヨルシカ、Adoなど第一線で活躍しているアーティストの原点に初音ミクがいること(元P含め)をフックに、ボカロPや企画者のインタビューを紹介してました。 私が知ってるのはDECO*27さん、Mitchie Mさんぐらいでしたけど。

マツ DECO*27さんはボカロイベントで握手してもらった思い出が……。Mitchie Mさんの神調教、なつかしいですが、今は神調教ってあまり言わなくなってますかね。

ヤマー あ、でも番組内では神調教をクローズアップしてましたね。

マツ 初音ミクの最初の頃は、普通に歌わせるとベタっとした歌い方しかできなくて、細部を微調整しないと人間っぽい歌声にはならなかった。それを、当時では考えられないレベルで人間っぽくしたMitchie Mさんの謎技術が話題でした。今は、例えばCeVIOなどは、最初から人間らしい歌い方になるし、機械学習ベースだと、さらに高度なものになってる。

ヤマー それをうまく使いこなして人間っぽさを出すことも1つの面白さだったんでしょうね。それこそ私、初音ミクがちょうど出だした頃にニコニコに生息していたので、最初期は曲をあさりまくってました。調教が上手い人はそれだけで差別化になってましたね。例えば、初期の神調教としては「奇跡の海」がありましたが、最初聞いた時鳥肌立って……w

マツ なつかしい「本気で歌ってくれた」シリーズ。その一方で、ベタ打ちの方がいいやって人もいて。ちょうど中田ヤスタカさんによる、PerfumeのAuto-Tune、Melodyneを使ったロボ声が流行している頃で、初音ミクはその両極端な歌い方をできるというのも魅力でした。

ヤマー 逆に人間にはできない超高速発声させる曲も盛り上がりましたね。

マツ CosMo(暴走P)の「初音ミクの暴走」に代表されるやつですね。それを人間が真似する流れが見事でした。

ヤマー ですです。歌い手の存在もクローズアップされてましたね。それこそ初音ミクの暴走を歌い切る歌い手が現れたとか。

マツ ボカロP、歌い手というのが、新たな音楽シーンを生み出していった。これは、日本の音楽史上では、1960年代のグループサウンズ、1970年代のフォークブームに匹敵する動きだったと思います。柴那典さんの書籍「初音ミクはどう世界を変えたのか?」では、「サマー・オブ・ラブ」というムーブメントに例えていました。

ヤマー なるほど。私は60年代70年代を知らないので、熱量が分からないんですが、近いレベルだったんですね。

マツ DAWがあれば音楽を作れる、ソフトシンセの時代だったというのも大きかったですね。楽器ができなくてもボカロPにはなれて、自分の持ち曲がなくても、ボカロ曲を歌えば歌い手にはなれる。ターンテーブルがあれば、楽器ができなくても音楽を作れる、ヒップホップに近いものがあるかもしれません。

ヤマー サンプリングが大々的に使われるようになったんでしたっけ。

マツ 初音ミクが登場した頃は、カバー曲を発表する場がなかったというのも、オリジナル曲を作ろうという動きにつながりました。当時は、音楽著作権をクリアした発表の場がなくて、それを自分たちで作った歌詞、メロディー、動画でコラボしていこうというN次創作の動きにつながっていった。

ヤマー ニコニコ動画の登場と重なってますよね。表現の場が急速に整備されていった。

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