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ゲーム開発会社が企画者を提訴 クラファンで1000万円以上集めるも開発費支払われず

» 2022年03月07日 18時54分 公開
[松浦立樹ITmedia]

 オンラインゲームやスマートフォン向けアプリの開発を手掛けるピクセル(宮城県仙台市)は3月7日、作曲家・古川元亮氏に対して損害賠償を求める訴訟を仙台地方裁判所に提起したと発表した。古川氏からゲーム制作の依頼を引き受けたが、その開発費が全く支払われていないという。

 古川氏がピクセルに制作を依頼したのは「スチームパイロッツ」というシューティングゲーム。同氏は2019年12月にMakuakeにて、同ゲームの開発費を募るクラウドファンディングを始め、目標金額250万円に対し、813万3000円を集めていた。

1度目のクラウドファンディングのプロジェクトページ

 当初は20年9月に完成予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響を受けてプロジェクトは停滞。新たに追加の開発費が発生したとして、21年4月に追加のクラウドファンディングを募り、288万9700円を集めていた。21年8月にゲームの完成と発送を予定していたが「開発に遅れが生じている」と、古川氏は8月に報告していた。

2度目のクラウドファンディングのプロジェクトページ

 ピクセルは、2019年6月14日に古川氏から依頼があり、口頭でゲーム制作を引き受けたという。その際に、「開発費を直ちに準備できない」と話を受けて、利益折半に合意した。その後の流れで開発の規模が膨らみ制作費が足りなくなったことから古川氏のクラウドファンディングへの協力にも同意したとしている。

 クラウドファンディングから得た資金に関して、古川氏に開発の支払いを要求したところ、古川氏のマネジャーである雨宮天気氏から、1回目のクラウドファンディング終了時までに、開発費の支払いの合意を得たが「いまだ支払われていない」と同社は説明している。

 加えて、利益折半の支払いについても古川氏からの説明がなかったため、21年7月に初期売上見込みなどの説明を同社が求めると古川氏側から「一方的に新たな条件変更がなされた」という。同社にとって承服し難い条件だったものの、調達資金から開発費が支払われる合意があり、開発も終盤に差し掛かっていたため開発を継続したという。

 しかし、8月にも膨大なデータが古川氏から送付され、作業が増大。開発費が出ていないため、ゲーム開発続行を断念し、11月24日付で内容証明を送り、ゲーム完成分のデータと成果物の権利引渡しを条件に、報酬の支払いを請求した。

 その後も両者は、代理人を通した交渉を続けたが、21年1月に古川氏に送った質問に対して、7日現在まで一切返答がないと、同社はコメントしている。

ピクセルが掲載した訴訟の経緯

 古川氏は3月4日にMakuakeにて、8月ぶりにプロジェクトの進捗を報告している。「新たなプログラマーを迎えてゲームの開発を続けている。ゲーム完成の時期は、まだ具体的に伝えることはできないが、約1年後の完成を目指す」と説明していた。

古川氏が4日に更新したプロジェクトの進捗状況

 古川氏は、1986年から2003年までコナミ(現コナミデジタルエンタテインメント)に在籍。サウンドチームのメンバーとして、「グラディウス2」や「A-JAX」「沙羅曼蛇(MSX版)」などのゲーム音楽制作に関わった。その後もフリーランスとして、音楽コンテンツを発信している。

【修正履歴:2022年3月10日午後4時 古川氏の経歴紹介の中で、誤解を招く表現があったことから記述を修正しました】



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