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ロシアのネット遮断で“別のビットコイン”が生まれるは本当? 分断が生むブロックチェーンへの影響(1/3 ページ)

» 2022年03月24日 08時00分 公開
[藤本賢慈ITmedia]

 今般のロシア情勢を踏まえて、多くのITサービス事業者がロシアでのサービス停止を発表している。

 そんな中、ネットの一部を賑わせたのが、インターネット遮断によってビットコイン等のブロックチェーンネットワークがロシアとそれ以外の国とで分断されるのではないか、というものだ。

 ブロックチェーンの世界ではネットワークの分断(フォーク)がこれまで度々報じられてきた。有名なのは2018年のビットコインネットワークのフォークで、ビットコインからビットコインキャッシュという暗号資産が新たに誕生している。

 ロシアのインターネット遮断で、ビットコインをはじめとしたブロックチェーンはロシア国内で別の通貨が生まれてしまうのか、その辺りを解説したい。

ロシアでのネット遮断の状況は?

 2月28日、ウクライナ政府がインターネットの資源を管理する複数の公的団体に対し、ロシアのサイトをインターネット上から排除するよう要請した。

 要請を受けた「ICANN」(Internet Corporation for Assigned Names and Numbers)や関連組織はこの要請を拒否したものの、インターネットの主要プロバイダーである米Lumen Technologiesや米Cogent Communicationsはロシア向けインターネットサービスの停止に踏み切っている。

 すでに決済サービスやWebサービスの利用が徐々に停止されつつあるが、ロシア政府もインターネット遮断による情報統制を強化する意向を強めているようだ。

 この動きを最初に報じたのはポーランドのニュースサイト「NEXTA」だ。NEXTAはロシアの全てのWebサイトはロシアのDNSサービスを使用するように切り替えなければならないと記載された文書を公開した。

 この文書が正しければ、ロシアの国民は同DNSで認識されているサイトにしかアクセスできなくなる(ただし、現在のところロシアでのネット遮断は実行されていない)。

 過去を振り返ると、ロシアは2014年ごろからインターネットを外部から遮断する実験に取り組んできたとされる。19年には正式に、国内のインターネットを海外から遮断する実験を完了させたと発表している。同年11月にはインターネットサービスプロバイダー(ISP)に、トラフィックを一元管理するシステムの導入を義務付ける法案「ネット主権法」を施行していた。

 ロシアによるネット遮断施策のベンチマークと目されるのは、中国のグレート・ファイアウォールだ。グレート・ファイアウォールは、もともと93年に中国政府が打ち立てた将来の情報化・電子政府化に向けた「金字工程」と呼ばれる国家戦略の一部として計画されたもので、03年の段階で基本的な検閲システムが完成し、稼働が開始されている。

 現在、中国国内ではDNSブロックやIPアドレス監視、キーワード単位での検閲など、複数のレイヤーで海外のインターネットへのアクセスがブロックされている。さらに、2021年に発表された規制により、暗号資産の取引とマイニング規制が徹底強化されている。

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