さらに、保存食用とレンジ用では製品のコンセプトも違う。
「保存食の方は、災害時に食べることを想定して、量は多くカロリーも高め、味も少し濃いめに作っています。レンジ対応の方は、普段の食事の中の一品として作っているので、量やカロリーは抑えめにして、味付けも保存食版に比べると抑えています」と中村氏。
また、保存食版は5年、レンジ版は1年という保存期間の違いは、原材料や加工の違いではなく、パッケージの違いだという。保存版はアルミ素材のパッケージで、密閉性を高めると同時に光が入らないように作られているが、レンジ版は、遮光性がさほど高くないパッケージに、レンジでの調理に対応するために、空気抜きの弁が空いている。その分、保存性は落ちるのだが、コストは下がるし1年持つのだから、ローリングストックの食材としては十分だろう。
そして、どちらも確かにおいしい。
「おいしいものを作るというのは、食品メーカーとしての大前提ですから、そこに妥協はありません。ただ、実は『カレーうどん』と『ほうとう』は、テーブルストックを起ち上げる前に、そっと出していたんです。それらは、保存食ではなくて、レトルトで食べられる麺ということで、レンジ対応の普通のレトルト食品として、地元でクローズドマーケットの形で販売していました。その傍らで、賞味期限5年という実績を作って、パスタを2種類完成させて4製品で出したという訳です」と中村氏。そこには、先にうどんの特許がとれて、その後でパスタの特許がとれたという事情もあるらしい。
ナポリタンは太麺でなければ、というこだわりで、専門家にお願いして味を決めていったり、災害時でもおいしい野菜が食べられるようにと、にんじんがゴロッと入っているなど具を大きくしたほうとうを作ったりと、レシピの研究も怠りなく、その一方で、でんぷん素材のバランスを決める試行錯誤も続けられた。
電子レンジ版の「麺Quick 濃厚海老クリームパスタ」も、自信の製品だという。かつて、中村氏は海老出汁のラーメン屋をやっていて、その時に購入した、海老をまるごとスープにする設備が社内に残されていた。
「この機械を使うと会社中が海老臭くなるんですよ。ただ、そうやって社内で海老を6時間以上、グツグツ煮て作った、海老の他には何も入っていない出汁を使っているんです。だから、鼻の奥から前に向かって海老の香りが抜けていきます。バイヤーさんに食べていただいたときに、『さすが水産加工会社だね』って言われました。もともとウチはアワビの加工をずっとやってきた会社なんです」と中村氏が言う通り、ほんとうに、驚くほど濃厚な海老のソースが楽しめる。
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