新型コロナウイルスへの対応として、初めて緊急事態宣言が出されたのはちょうど2年前、2020年4月7日のことであった。そこからわれわれは大慌てで、大勢で集まらなくても社会を回す方法をあれこれ模索し続けてきた。
飲食、交通、観光、小売りといった事業はそもそも人を集めなければ商売にならず、いまだに苦しい戦いを続けている最中だが、一部のオフィスワークはテレワークの導入が急速に進んだ。以前から働き方改革の一環でテレワークの導入に積極的だった企業もあったが、多くはなし崩し的に突入、あとから追っかけで制度を整えるといった格好だっただろう。
4月7日、アステリア、サイボウズ、ZVC Japan(Zoom)、レノボ・ジャパンは、全国の20〜60代のフルタイムで働く就業者2000人を対象に「これからの働き方を考える」というテーマで、4社合同の調査レポートを発表した。
テレワークの開始から2年、働き方や働く人の意識はどのように変化したのか、調査結果から考えてみたい。
まずテレワークの実施状況だが、緊急事態宣言が頻発していた2020年3月から2021年までは、テレワーク実施が30%近くあった。現在では25.8%とやや減ったものの、テレワークが定着している様子が見て取れる。
この数字を多いとみるか、少ないとみるかという話になると思うが、それにはそもそもテレワークできる職種かどうかが問題になる。今回の調査では、テレワークができない職種である方が約6割となっており、テレワーク可能な職種内で、導入・非導入の比率はおよそ7:2となっている。
パーセンテージに違いがあるのは、「実施」と「導入」の違いであろう。制度的にはあるが、今は実施していないというケースもあるということである。
この調査では、テレワークしにくい、できない理由を、テレワークできる職種に限り調査した結果として、社内・社外とコミュニケーションがとりにくいという問題がクリアできていないこともあきらかになった。
テレワークでのコミュニケーション方法は、メール、テキストチャット、リモート会議、電話などが考えられるが、このうちメールや電話はオフィスでも行なっていたわけで、そこは変わらないはずだ。一方でリアルではその場に行けばちょっと話ができることも、リモートではいちいち相手へアクセスしなければならないとか、リアルタイムでのコミュニケーションにならない(時間差がある)ということで、相手へちゃんとタッチできたか分からないということであろう。
ただこれはもう、習慣の問題になってくるのかなとも思える。社内でのちょっとした雑談は親睦を深めるのに有意義だが、それに代わる仕組みをオンライン上で考えていくと、今はテキストチャットに落ち着かざるを得ない。そうなったときに、リアルと同じように機能するか、という課題がある。これはある意味、子供達に「テキストは思ったほどには気持ちが伝わらない」みたいな課題と同じじゃないかという気がする。
将来仕事もメタバース内で可能になり、アバターで自分の姿が代替できるようになればまた違った展開になるのかもしれないが、それが実現するまでには、この問題は「慣れ」で解決してしまうのではないか。
なおテレワークだと社内関係者とコミュニケーションがとりにくいと考えている人達は、創業年数が古い企業ほど多いという結果も出ている。創業年数が違うだけで、働く人の意識まで違うというのは興味深い。それが社風というものだろう。
逆に見れば、創業10年未満のベンチャーは最初から背負うものがなく、変化に対してリスクを感じていないということではないかという気がする。
一方で、リモート会議はかなり深く浸透しており、これが本格化、長時間化してきているのではないかという懸念もある。例としてBCNのヘッドフォン・イヤフォン売上ランキング(3月28日〜4月03日)を見てみると、ベスト10にマイク付きヘッドセットが2つ、20位までに6つもランクインしている。一番古いもので、2014年製だ。一般的なヘッドフォンの売れ筋からすれば、明らかに異質である。
これまでは手持ちのイヤフォン・ヘッドフォンで凌いできたが、ボイスチャット専用品がないとどうにもならない状況になってきているのが分かる。こうしたリモート会議の頻度や長時間化が、社員間の気軽なコミュニケーションを阻害しているという傾向もあるのではないだろうか。
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