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市販のデジカメを3D画像が撮れるように改造 LiDAR不要 米スタンフォード大などが新たな変調器を開発Innovative Tech

» 2022年04月13日 09時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 米スタンフォード大学とスウェーデンのChalmers University of Technologyによる研究チームが開発した「Longitudinal piezoelectric resonant photoelastic modulator for efficient intensity modulation at megahertz frequencies」は、市販のデジタルカメラで2次元ではなく3次元で光を捉える、奥行きある3D画像を撮影できるようにした新しいタイプの変調器だ。

研究室の机上で構築した、市販のデジタルカメラと新型変調器を組み合わせたプロトタイプシステム

 イメージセンサーは、レンズから入った光の強さや色を電気信号に変換する機能を持つ。デジタルカメラやスマートフォンなどに搭載され、年々小型化・高性能化し、今では数千万画素の解像度を持つまでになったが、2次元での撮影しかできていない。

 一方、光で物体までの距離(奥行き)を測定するデバイスといえば、自動運転車などに活用されているLiDARだろう。 物体にレーザー光を照射し跳ね返ってくる光を測定することで物体の距離を計算するLiDARだが、高価でかさ張るため小型デバイスへの搭載は容易にできないのが現状だ。

 LiDARを直接使用せずに、デジタルカメラやスマートフォンに標準で搭載するイメージセンサーと、新しく開発した変調器を組み合わせて3Dイメージングを可能にしたのがこの研究となる。

 この変調器は、光を明るくしたり暗くしたり、1秒間に数百万回の光のオン/オフを効果的に行えるという。光をオン/オフする方法はいくつかあるが、今回は音響を使ったアプローチを採用し、高い品質係数を実現しつつ変調効率を向上させている。また複数の入射角に対して効率的な変調も行える。さらにコンパクトな上、低コストで製造できるという。

 実験では、市販のデジタルカメラを受光器として使用するプロトタイプシステムを実験室で構築した結果、メガピクセル解像度の深度マップの撮影に成功し、高空間分解能のToF(Time Of Flight)イメージングが可能なことを実証した。光変調器の動作に必要な電力も少なくて済んだという。この結果から、Optical phased array(OPA)や空間光変調器(SLM)に依存する複雑なLiDARシステムの代替手段としての可能性を示唆した。

Source and Image Credits: Atalar, O., Van Laer, R., Safavi-Naeini, A.H. et al. Longitudinal piezoelectric resonant photoelastic modulator for efficient intensity modulation at megahertz frequencies. Nat Commun 13, 1526 (2022). https://doi.org/10.1038/s41467-022-29204-9



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