とはいえ、これらの議論はあまり意味がない。冒頭で述べたように、政府は確かに「スマートフォンOSの寡占」を気にしているものの、日本での独自OSを作ろう、などとは言っていないからである。GMSのないFire OSやHermonyOSが「Androidとは別のもの」とされているように、重要なのはOSのコア以上に「エコシステム」の方だ。
4月26日、内閣官房デジタル市場競争会議は、「モバイル・エコシステムに関する競争評価」の中間報告書を公開した。
この中では「2つのスマートフォン向けOSが寡占環境にある」としつつも、その結果として生まれる国際間での開発優位性は否定していない。
問題は、そのOSの上に出来上がる「モバイルエコシステム」の上では、プラットフォーマーの意向によって公正なビジネスが阻害されるのではないか、という懸念だ。OSプラットフォーマーによって特定のビジネス領域が固定され、新規参入や競争によるコスト低下が起きないこと、消費者が特定のシステムにロックインされて移行が難しくなること、などが懸念されている。
内閣官房デジタル市場競争本部事務局が公開した、「モバイル・エコシステムに関する競争評価 中間報告」および「新たな顧客接点(ボイスアシスタント及びウェアラブル)に関する競争評価 中間報告」 説明資料から抜粋。問題とされているのはOS寡占からくる「エコシステムの硬直」だ。そうした課題は他国でも指摘されているが、日本も「諸外国の動きに留意しながら検討を行っていく(報告書より抜粋)」としている。ただし、問題になりそうな事象が起きてからでは影響が拡大して産業側の対応が難しくなるため、「事前規制による対応」が念頭に置かれている点に留意したい。事前規制については、プラットフォーマー側からのより強い反発も予想される。
同様の観点は、音声アシスタントを中心とした製品や、スマートウォッチなどのウェアラブル機器でも問題視されている。これらはスマートフォンとひもづく部分が多く、同じような懸念が示された形だ。
報告書内には、具体的にどの部分をどう規制する、といった各論は盛り込まれておらず、課題意識としては至極もっともな内容かと思う。いきなり「日本独自のスマホOSを」といった、産業構造を無視した内容が出てきているわけではないのだ。なので、「日本独自」という話をこれ以上危惧する必要はないだろう。
ただ各論の部分については、セキュリティや広告ビジネスなど、細かな要因との調整が必須だ。実効性の部分についても、プラットフォーマーがその判断を飲めるのかどうか、国際的な枠組みで考える必要が出てくる。むしろ重要なのは、この先の「各論」になってくる。
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公取委がスマホOSの市場調査へ 「iOSやAndroidに他のOSが競争圧力与えているか」Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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