これらの問題点は、全て1つの事象に集約できる。
それは「国際的な開発効率」だ。
特にスマホ以降は、アプリストアがあり、そこに合わせて開発してビジネスが回ることが重要なことだった。ビジネスパイと開発ノウハウの両方が存在していないと、アプリやサービスは増えていかない。
ハードウェアも同様だ。スマホを作るには、SoCメーカーが部品を提供するだけでなく、それを使ってスマホを作るために必要なソフトウェアもいる。SoCメーカーや部品メーカーは、スマホを開発するために必要な開発情報を提供しているわけだが、その主軸は当然Androidになっている。
新しいOSを作っても、パーツメーカーが必要な開発情報とソフトウェア・スタックを用意し、製造に必要なサプライチェーンがつながらないと、なかなか増えていかないのだ。1モデルや2モデル用意することはできても、その先は「ビジネス次第」である。
仮に日本が独自OSを作ったとして、それは国際的なバリューチェーンの中に入れるだろうか? 仮に日本メーカーに十分な技術があったとしても、開発効率や低コスト化の面で、国際的バリューチェーンの出来上がったプラットフォームに対して不利なのは否めず、よほど特別な条件がない限り、消費者の支持を得るのは難しいだろう。特殊な条件とは「他よりも圧倒的に魅力がある」ということ。それができるならやる意味はあるが、政府からの要請でできるような性質のものではない。
中国では、ファーウェイが米中摩擦の煽りを受ける形でAndroidをそのまま使えなくなり、「HarmonyOS」を開発して使っている。だがこれだって、中国以外の国ではあまり受け入れられておらず、同社のスマートフォンビジネスに大きな影響があった。販売できる国が減るだけで、製品には極めて大きな影響が出る。
もう1つ、ここで重要な点を考えてみたい。「独自OS」とは何のことを指すのだろうか?
前述したファーウェイ「HarmonyOS」の中でもスマートフォン版については、OSの多くの部分がAndroidと共通である。オープンソースである部分はほとんどそのままで、その上にあってGoogleが提供している「Google Mobile Service(GMS)」の部分がなく、独自実装になっている。理由は、GMSの部分が規制に引っ掛かるからだ。だから、Google PlayやGoogle MapのようなGoogleがサービスを提供する部分や、そこにひもづくソフトウェアは利用していない。
Amazonが「Fireタブレット」に使っている「Fire OS」もそうだ。ベースはAndroidなので多くのAndroidアプリが動作するが、あくまでAmazonの製品として作られており、標準ではGoogle Playが搭載されていない。
これらは、OSのコアとなる部分はAndroidとほぼ同じなのに、アプリケーション販売のエコシステムやUIの一部、構成するコンポーネントの一部が違うから「別のOS」ということになっている。
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