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自宅で宇宙を独り占め――日食も流星群も、惑星が並ぶ天文ショーも再現 “バーチャル星空観察”のススメ遊んで学べる「Experiments with Google」(第7回)(1/2 ページ)

» 2022年04月30日 09時30分 公開
[佐藤信彦ITmedia]

 「Experiments with Google」は、Googleが人工知能(AI)や拡張現実(AR)といった最新技術の可能性を示すために、実験的な応用例を紹介するショーケースだ。膨大なコンテンツを公開しており、その多くはスマートフォンやPCで試せる。

 この連載では、多種多様な応用例の中から興味深いものをピックアップ。実際に遊んだ体験レポートを通して、裏側にある技術の解説を行っていく。

 読者の皆さんも、ぜひ自分の手で試しながらその仕組みを学んでもらえたらうれしい。きっと、最新技術の魅力に気付くはずだ。

2022年4月下旬、惑星がそろった天体ショーを見ましたか?

 前回の記事は世界旅行をテーマにしたので、今回は地上から離れて空に目を向けてみたい。民間人でも国際宇宙ステーション(ISS)に行ける時代が訪れ、宇宙が以前より身近な存在になった。それでも、地上から眺める星空の美しさは変わらない。

 そんな星空では、2022年4月の下旬に美しい天体ショーが繰り広げられた。4月25〜28日ごろの明け方、東の空に木星と金星、火星、土星、月が一直線に並んだのだ。肉眼では暗くて見えないが、木星と金星の間には海王星も並んでいた。きっと見事な光景だっただろう。残念ながら筆者は見逃してしまったが、読者の皆さんはご覧になっただろうか。

 肉眼では見られなかったので、「バーチャル星空観測」というテーマでExperiments with Googleをのぞき、美しい星空を仮想的に眺めてみたい。

場所も時間も超えて、好きなときの星空を眺めよう

 まずは地球上の好きな場所の、好きな日時の星空を、天気など気にせず眺められる「Planetarium」を使ってみよう。これなら天体ショーのあった空を再現できる。ここでは4月24日の早朝に狙いを定めた。

 起動して、観測地点を「東京」に、日時を「4月24日の4時」に設定した。画面上をドラッグして視線を東の方向へ向けると、木星などの惑星が並んでいる様子を見られた。本当なら肉眼で惑星の形は認識できないが、Planetarium上では分かりやすく拡大している。

photo 東の空に惑星が勢揃いした(撮影:筆者、出典:TheSkyLive.com)

 このように、Planetariumは星空を単純に再現するだけでなく、補足情報を追加してくれる。例えば、星座を作る星を薄い線で結んでいるので、星座の形が分かりやすい。各星座の主要な星には、星座の略号と、明るい星から順番に「α」「β」「γ」という識別符号を付けている。

 視線を南に動かすと、雲のようにボヤッとしたものが現れる。天の川だ。肉眼で見た様子に近い表現で、没入感を得られる。ちなみに、天の川は太陽系が属している銀河系「天の川銀河」を内側から見たものだ。この方向が銀河系の中心なので、星の数が多く、明るく見える。

 天の川の周辺にたくさんある緑色の丸や四角は、星雲や星団を表している。Planetarium上で表示するのは、18〜19世紀に活躍した天文学者のシャルル・メシエが分類した星雲と星団で、「M数字」という通し番号で区別できる。

photo 見事な天の川も自宅で堪能できる(撮影:筆者、出典:TheSkyLive.com)

天の川とペルセウス座流星群を見るため、夏の空へ

 天の川が見やすいのは、夏の夜だ。そして、そのころには有名な「ペルセウス座流星群」も楽しめる。ペルセウス座流星群が最も活発になる2022年8月13日の4時ごろの空を見てみよう。

 画像内の赤丸で囲った場所を「放射点」や「輻射点」と呼び、ペルセウス座流星群の流れ星は、ここを中心にして飛び出すように見える。実際に観測するときは、ここを中心に空全体を眺めると見つけやすいはずだ。

photo 赤丸で囲った部分がペルセウス座流星群の放射点(撮影と加筆:筆者、出典:TheSkyLive.com)

 せっかくなので、日本から見えにくい星空も調べてみる。南十字星はどうだろうか。南十字星は明るい4つ星が十字型に並んでいる。実は「みなみじゅうじ座」という夜空全体で最も小さい星座だ。

 南十字星を見やすいオーストラリアのシドニーへ移動した。天の川の中にある、形の整った十字架がすぐ見つかった。ただし、よく似た「ニセ十字」にだまされないよう要注意だ。

 さらに天の川から左へ少し離れたところには、大マゼラン雲と小マゼラン雲が見える。いずれも天の川銀河のすぐ近くにある小さな銀河で、数十億年後には衝突する可能性がある。そのときの夜空は、今とは比べものにならないほど華やかになるだろう。

photo 赤丸:南十字星、緑丸:ニセ十字、青丸:大マゼラン雲、黄丸:小マゼラン雲(撮影と加筆:筆者、出典:TheSkyLive.com)

惑星の位置は、NASAのデータから取得している

 Planetariumは恒星や星雲、星座のデータを参照し、Web用グラフィックライブラリ「WebGL」を使って描画している。

 恒星などと違い、惑星は動く速度が速いのでNASA(米航空宇宙局)のジェット推進研究所(JPL)が公開している「Horizons System」から精密なデータを取得している。

 ユーザーが設定できる期間は1992年から2025年まで。ただし、2025年以降の日時も指定できたので、正確な星空を表示できる限界が2025年なのだろう。

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