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「1000台売る覚悟があればいける」──飛騨高山にオープンした自作キーボード専門店「白銀ラボ」インタビューハロー、自作キーボードワールド 第12回(2/4 ページ)

» 2022年04月30日 14時00分 公開
[ぺかそITmedia]

ヨーキースさん トラックボールは10代の頃からずっと好んで使っていまして、キーボードと一体化するのであればこれ(トラックボール)だなと。そのうえで使いやすいトラックボールを考えていくと、ボールが大きければ大きいほど使いやすい。1Uサイズ(キーキャップ1つ分の大きさ)のトラックボールがモジュールとして売られていて、すぐキーボードに搭載できるかなとも考えましたが、絶対でかいほうがいいよなと思いました。

 55mmの大玉は無理でも最低34mmぐらいじゃないと。でもそういう都合の良いものがなかったので自分で作るしか無い、となりました。ちなみにKeyballがメインになる前は米Kensingtonのトラックボール「Slim Brade」と、分割型キーボード「Corne」を組み合わせて使っていました。

── それでもモジュールが無いからという理由で自分でセンサーと組み合わせて設計する。でも3Dプリントとかではなく量産品さながらの射出成形で、という考えに至るのがユニークだなと思いました。

ヨーキースさん 最初は3Dプリント用のデータを公開して「使いたい人は印刷してください」的な感じにしようと考えてたのですが、それだと多分そこまで普及しない、ハードルが高いなと考え、思い切って(射出成形に)チャレンジしてみました。

── 広く普及させる、導入のハードルを低くさせるという以外に射出成形のメリットは何でしょうか。コストも掛かりそうですが。

ヨーキースさん やはり部品の精度でしょうか。トラックボールはやはりボールが変に擦れてもいけないし、かといって逆さにしたときにボールが落っこちるようなものでも困ります。そうなってくると射出成形の精度が必要になります。お試しで30万とかだったらやってみようと見積もりをとってみたら、そういうわけにも行かず。なんだかんだそれの2倍、3倍ぐらいかかりましたね。

── 個人でやるにはなかなか気合が入らないとできないですね。

ヨーキースさん 1000台ぐらい売る覚悟があればいけます。

── 実際Keyballの実機を触ってみたとき、実際に親指トラックボールとして自然な位置に収まっていてすごいなと。ついでに意地悪な感じでひっくり返してみたのですがボールが落っこちないのでモジュールの設計がすごく良いなと思いました。あのモジュールの形状には何か理由がありますか?

ヨーキースさん いろいろと設計上の制約はありました。もちろん手の当たり具合が良いように角を丸める他に、射出成形のための抜き勾配とかも考慮しています。他にはクリックポストで発送できるギリギリの高さになるように設計しています。

── 発送をするクリックポストの箱の高さが要件にあるのは珍しいですね。将来的な展開は何かお考えはありますか?

ヨーキースさん 実は一体型の(いわゆる普通の)キーボードも計画しています。とはいえ40%ぐらいの配列になるかどうかなどは未定ですが。やはり射出成形で作ったトラックボールユニットを広めたいなと。一体型のニーズにも答えつつ。

── それはユーザーさんから直接コメントを頂いた結果だったりしますか。

ヨーキースさん いえ、これはどちらかというと僕の単純な開発意欲といいますか、まだまだ作りたいものがたくさんあります。他にもワイヤレス接続とかも盛り込みたいですね。

── 自身のトラックボールユニットをコアに置きつつ、その他の配列や機能とかを広げていきたいと。

ヨーキースさん そうですね。まだまだこれからでやっとモジュールができてスタートラインに立ったくらいです。他にも個人的なところではスイッチやキーキャップにもこだわってないので、そういったところも今後突き進めて行ければなとおもいます。

“実際に触り、気に入ったら買っていく”──飛騨高山の文化

白銀ラボの店舗前

── 白銀ラボさんは今年の年明けすぐにオープンされましたが、飛騨高山を選んだ理由は何かありますか?

ヨーキースさん もともと住んでいた、というのもあるのですが。この飛騨高山の気質としまして、高山って家具生産が盛んな土地でたくさん(お店が)立ち並んでいます。例えば国産のイージーチェア(座面の大きい一人用の椅子)一つ取ってもだいぶ値段が高いのです。一脚20万、30万円するので、家具を買いに旅行に来る。そのためのショールームとか観光客向けに多くあります。

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