5月18日、ソニーグループは2022年度の経営方針説明会を開いた。その中で、同社会長兼社長 CEOの吉田憲一郎氏は今後の成長領域を「モビリティ」と「メタバース」、と語った。
それはどういう意味を持つのか? 少し深掘りしてみよう。
ソニーが「モビリティ」と「メタバース」にスポットを当てる理由はシンプル。それぞれ、以前から投資を加速していた領域だからだ。
特に分かりやすいのは「モビリティ」だろう。
ソニーは「ウォークマン」などで、音楽の世界を「モバイル」にしてきた企業だ。スマートフォンの時代には先端を行く、というよりはトレンドを追いかける立場になってしまったが、同社自身、そのことにはしくじたるところがあったのは間違いない。
そのため、吉田社長が2018年の就任より「大きな変化」として取り組んできたのが「モバイルからモビリティ(移動するもの)」への変化だ。吉田社長はモビリティを「ここから10年で大きく進化するトレンド」と位置付け、移動するものとそれを制御するAIなどの技術への投資を続けてきた。
まず世の中に出たのは、2018年に再登場した「aibo」だったが、その後、2020年に試作EV(電気自動車)「VISION-S」を発表、さらにそこから研究を続け、先日、ホンダと提携し、2025年にEV市場への参入を目指すまでになった。
「モバイルが世界を変え、次のメガトレンドはモビリティです。モビリティがIT・通信技術と結び付くことによって、世界を走っている10億台の自動車が、長期的にサービス化していくと思います。すなわち、車の機能がソフトウェアになり、買ってからも進化する車になります。このことによる構造変化を踏まえたわれわれの貢献領域は、『安全』です」
吉田社長はそう説明する。
2025年をめざして進んでいるホンダとの合弁事業について、具体的な進捗状況は語られなかったものの、ソニーが得意とするセンサーと、それに付随するAI技術の活用が重要、との立場を示した。
ソニーの「ハードウェア生産」による収益は、ゲーム機や家電などが中核となっているが、先端領域で争っている分野としては、イメージセンサーなどの事業が中心である。イメージセンサー事業の中でも、収益・数量の柱はハイエンドスマートフォン向けだが、自動車向けについても「顕著に成長しつつある」(ソニーグループ・副社長兼CFOの十時裕樹氏)状況だという。
モビリティ=動くもの、ということだが、EVなどをはじめとした先進領域は、センサー+AIで自律的な動作や安全確保などの付加価値が組み込まれたものになる。だからこそ、ソニーは以前より、自社の強みであるセンサー事業拡大の領域として拡大すべく自動車にフォーカスし、ソフトウェアやサービスの面で事業価値があると判断し、積極展開をすると決めていた。
収益規模や事業拡大のペースなど、詳しいビジネスプランには不明な点が多いが、同社が「モビリティ」を軸としてアピールするのは、以前からの既定路線といえる。
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