そしてもう一つ、ゲームを軸としたメタバースを拡大する上で重要となるのが、2022年4月に買収を発表したゲーム開発会社「Bungie」だ。
Bungieは「Destinyシリーズ」をはじめとしたネットワークゲームを長く運営している企業であり、ソニーによる買収を決める際にも「ソニーの戦略からは独立してコンテンツ開発とサービス運営を行う」ことが条件だったほど、「運営」「開発」にこだわっている企業だ。
吉田社長は「Bungieと話し、多くの学びを得ている」という。
「Bungieから、『ライブサービスはインタラクティブにユーザーとともにゲームを開発していくもの』という点を学びました。ここはソニーにまだ足りない部分です」
そう吉田社長は話す。ソニーのスローガンの1つに「10億人と直接つながるビジョン」というものがある。ネットワークサービスなどで顧客と直接つながる「Direct to Consumer」という考え方を積極拡大しており、その究極目標が「消費者10億人とつながっている企業」だ。
「10億人とつながる目的は、ユーザーから学ぶことです」と吉田社長はいう。直接つながることはマーケティングや販売など、多数の面で有利なことだ。そうした側面も当然あるのだろうが、あえて経営方針説明会の場では、そうした部分ではなく「改善」に向けた関係を強調する。
それは、Bungieとのエピソードに近い部分があるのだろう。
ソニーのゲーム事業は堅調だが、ユーザーがまったく不満を持っていないか、というとそうではない。PS5の入手難易度や、ネットワークサービスを使う上での「お得さ」などはその際たるものだろう。
品質や機能、価値などは時代によって変わる。特にメタバースはまだ出来上がっていないものだ。Bungieが、ネットワークゲームを「ユーザーから学びながら、インタラクティブに作っていく」という姿勢は、メタバースやライブエンターテインメントのような、「完成していない市場」では必須のものとなる。
だからこそ、そうしたノウハウを手に入れるためにもBungieをグループ内に入れ、これからのビジネス展開の手本とし、さらに、ノウハウ共有による開発力強化を狙っているのだろう。
現在の計画では、Bungieからの学びをもとに、ソニー・インタラクティブエンタテインメント傘下の「PlayStation Studio」で、2025年までに10タイトル以上のライブサービスを開発する予定だという。
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