これまで水産業とは縁がないような異業種からの新規参入も続々と始まり、今年に入って国内に陸上養殖プラントを建設するニュースが続いている。
例えば、プラント大手の日揮は福島県浪江町の北産業団地で、サバの陸上養殖プラントを今冬に着工すると発表している。大和ハウス工業はアトランティックサーモンを生産できる国内最大級の陸上養殖施設を富士山麓に建設する計画を2023年度完成予定で進めており、プラントの建設はノルウェーの養殖事業者が請け負う。
福岡のRKB毎日ホールディングスのような放送事業を中核とする全く畑違いに見える企業もサーモンの陸上養殖事業に参入し、地域の経済活性化につなげようとしている。養殖クラウドと名付けられた最新の陸上養殖技術を持つネッツフォレスト陸上養殖とパートナーシップを結び、フランチャイズスタイルでの事業展開を目指す。
陸上養殖に関してはIMTエンジニアリングが国内外で需要が高いバナメイエビの陸上養殖の研究開発を10年前から国と行い、自然環境に左右されず、どこにでも設置できる屋内型エビ生産システムをすでに事業化している。
新潟県妙高市にあるプラントは、妙高の雪解け水と富山の海洋深層水に人工海藻を入れた巨大な水槽があり、水を造波装置で動かして育てる活きの良いエビは「妙高ゆきエビ」の名前でブランド化されている。加えてIoTとAIを駆使して自動化された養殖システムはパッケージ化され、国内外への販売を目指している。
同じバナメイエビの陸上養殖では、次世代水産養殖システムの開発に取り組むスタートアップのリージョナルフィッシュとNTTドコモ、岩谷産業、奥村組の4社が共同で、ICTを活用した最適パッケージ化の実証実験を行っている。
NTTドコモは海面養殖でも使用されているICTブイをベースにした水質遠隔監視システムと、リモートで養殖環境を管理できる「ウミミル」アプリをセットで開発し、各種センサーと連携できるAPIも提供している。
陸上養殖の分野では以前から注目されている岡山理科大学が研究開発する好適環境水を用いた完全閉鎖循環式陸上養殖のシステムについても、NTT東日本との連携による世界初のベニザケの養殖事業化が進められている。生産だけでなく加工から流通販売まで含めたビジネス化を目指している。
陸上養殖システムの研究開発は海外でも始まっているが大量生産を前提としたものが多い。食の課題を解決する上で大きな役割を占めると見込まれるが、海面養殖に比べて設備投資やエネルギーコストの負担が大きく、再生可能エネルギーと組み合わせるなど新しい発想がまだまだ必要と言える。日本の研究開発が未来の陸上養殖を支えるものになるよう期待したいところだ。
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