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新作アドベンチャー「春ゆきてレトロチカ」をプレイしたマンガ家が感じた実写の魅力と難しさサダタローのゆるっと4コマ劇場

» 2022年05月29日 08時00分 公開
[サダタローITmedia]

 スクウェア・エニックスから本格推理アドベンチャーゲーム「春ゆきてレトロチカ」が5月12日に発売されました(Nintendo Switch/PlayStation4/5/Steam)。推理ゲームが大好きなボクは発売日にPS5版を購入し遊んでみました。

「春ゆきてレトロチカ」公式サイト© 2022 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved. Developed by h.a.n.d., Inc. Story by Nemeton

 このゲームの最大の特徴は実写のドラマ映像を見ながらプレイしていく点です。100年前、50年前、そして現在という3つの時代に起こったある一族にまつわる事件を、桜庭ななみさんをはじめとする俳優の方々が演じるドラマを見ることで解き明かしていきます。

 実写ゲームというと、まだゲームハードのスペックが高くない時代に出来の悪い作品が多く発売されたこともあり、敬遠する方もいるかもしれません。そもそも自分のペースでプレイできるゲームというジャンルと、演者のお芝居をゆっくり鑑賞する実写映像との相性は決して良いとはいえません。本作でもそれをなんとか解消しようという工夫があります。

 このゲームでは事件の「問題編」を実写ドラマで鑑賞し、そのドラマで得た情報を元に「推理編」で考察して「解決編」に向かう構造になっています。実写をゲームに落とし込む良いシステムだと思うのですが、最初は情報を見逃すまいと隅々まで実写映像を見るものの、ゲームに慣れてきて推理パートがある程度作業的に解けるようになると、実写ドラマを見る時間がじれったくなってきます。推理パートの操作性の悪さもあり少し残念に感じました。

 一方で実写ならではの映像美は素晴らしいものです。このゲームのストーリーは本格ミステリーとして良質ではあるのですが、突拍子もない展開も少なくはありません。そういった部分を、役者さんの魅力的なお芝居で説得力のあるドラマに仕上げていたのは実写だからこそ。横溝正史や江戸川乱歩の世界を思わせる風情のある世界観も、実写の美しい風景があってこそだと思います。

 手放しでほめられるわけではありませんが、良質なストーリーを役者さんと共に追いかけていく没入感は実写のゲームでしか味わえません。最近はゲームグラフィックの進歩により俳優さんがCGのゲームキャラとして普通に登場していたりもしますし、そもそもゲームが実写である必要はないという意見もあるでしょうが、「セガサターン」時代の名作実写アドベンチャーゲーム「街」(1998年発売)にドハマりしたボクとしては本作のようなチャレンジングな良作が今後も出てきてほしいと思います。

著者紹介:サダタロー

1998年にテレビ番組「トロイの木馬」出演をきっかけに漫画家デビュー。代表作は「ハダカ侍」(講談社、全6巻)、「ルパンチック」(双葉社、1巻)、「コミックくまモン」(朝日新聞出版、既刊7冊)など。現在、熊本日日新聞他で4コマ漫画「くまモン」を連載中。Pixivはsadataro、Twitterは@sadafrecce

連載:サダタローのゆるっと4コマ劇場

漫画家のサダタローさんが、世界初の電脳編集者「リモたん」と一緒に話題のアレコレについてゆる〜く語る4コマまんが新連載。たぶん週末に掲載します。連載一覧はこちら。過去の連載はこちらからどうぞ。

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