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「AFロック」に「置きピン」、役目を終えた撮影テクニックたち荻窪圭のデジカメレビュープラス(2/3 ページ)

» 2022年06月12日 07時20分 公開
[荻窪圭ITmedia]

 でも、その後、一眼レフのAF測距点が数10に増え、AFセンサーの性能も上がり、背面にスティックが付くことでファインダー上のAFポイントを選べるようになったが、それでもフルサイズ一眼レフだとAFエリアが中央に偏っていたりして、結局AFロックしちゃうのが一番確実で自由な構図で撮れたのだ。

ニコン「D780」(2020年発売)のファインダー。AFエリアが中央部に集まっているのが分かるかと思う

 そんなAFロックが使われなくなっていった一番の理由はミラーレス一眼の誕生だろう。

 ミラーレス一眼のAF上のメリットはイメージセンサー自体がAFを賄うので画面上のどこにでもピントを合わせられること。

 それでも初期の頃はAFが非常に遅かったりAF枠の数が少なかったりするなどAFに関しては一眼レフの方が上と言われ続けてきたが、数年掛けてAF性能は向上。十分なレスポンスと速さや正確さが得られ、イメージセンサー上に位相差センサーを埋め込んだ像面位相差AFも普及し、実用上何の問題もなくなったのである。

 そうなるとミラーレス一眼のイメージセンサー上でAFを行うというデジタルな仕組みが効いてくる。

 AF枠の数を増やせるので好きな場所にAFポイントをおけるし、AF枠のサイズや形も変えられる。当初のミラーレス一眼は数10だったが、今は数百のAF枠を使えるのが当たり前だ。

 そして、AF枠を動かすスティックが標準装備されるようになったことで、ファインダーを覗いたまま任意の位置にAFポイントを置けることでいちいち中央で合わせる必要もなくなったのである。

AF-ONボタンとスティックが横に並ぶキヤノンの「EOS R6」

 被写体の自動検出もミラーレス一眼の進化点。

 2005年にニコンの「COOLPIX」シリーズで初搭載された顔検出AFもあっという間に当たり前になり、2011年にはオリンパスの「E-PL2」が初めて瞳検出AFに対応した。

「COOLPIX S1」(2005年発売)の「顔認識AF」機能。この頃はちょっと顔が斜めを向くと検出してくれないなど、まだまだだったがその登場は衝撃だった
ソニー「α7 III」で瞳検出した図

 2019年にはソニーが動物の瞳検出AFを搭載。

2019年、ファームウェアアップデートによるα7 IIIにリアルタイム動物瞳AFが搭載された

 その後、各社が競うようにAI技術を用いた被写体の自動検出の技術を進化させ、鳥の瞳AFとか列車とか飛行機とか車とかバイクとか、いろんな被写体を自動的に認識するようになった。

オリンパス「E-M1X」の列車認識AF

 この技術はまだ進化の途中で、将来は精度も上がりより実用的になると予想できる。

 かくして、ファインダーの中央でAFロックして構図を決めて撮影するというAFロック技は少しずつ使われなくなっていったのだ。それを知らない若いカメラマンが出てきても不思議はない。

 個人的には、動かないものを撮るときは昔の手癖で中央でAFロックすることはあるし(スティックでAF枠動かすより早いことあるし)、半押しでAFをロックしたあとで全押しという習慣はあるけど、昔に比べると圧倒的に頻度は減ってるのだった。

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