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「AFロック」に「置きピン」、役目を終えた撮影テクニックたち荻窪圭のデジカメレビュープラス(3/3 ページ)

» 2022年06月12日 07時20分 公開
[荻窪圭ITmedia]
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置きピンはどうなった?

 AF絡みでもう1つ。

 昔、走ってくる動物とか列車とかを撮るとき「置きピン」という技がよく使われた。

 カメラのAFには、一度半押しをする(あるいはAFボタンを押す)とそこでピントを合わせてシャッターを押しきるまでフォーカス位置が動かない「シングルAF」(略してAF-S。キヤノンだとONESHOT AF)と、シャッターを押しきる瞬間までAFが動き続ける「コンティニアスAF」(略してAF-C。キヤノンだとSERVO AF)がある。

 高速なAFが可能な一眼レフのAF-Cは十分実用的だったが(ただし、AF枠が少ないときは常にそこに被写体を捉え続けなきゃいけなかった)、コンパクトデジカメの時代や当初のミラーレス一眼はAF速度があまり速くなく、AF-Cで被写体を追い続けるのが困難だったのである。

 そこで推奨されたのが「置きピン」。

 被写体がどう動くか予想できる、あるいは期待して待つときは、シングルAFモードにし、あらかじめ「ここに来たときにシャッターを切りたい」という場所を決め、そこ(あるいはそこと等距離である場所)にフォーカスを合わせてAFロックし、被写体がそこに来た瞬間にシャッターを押すのである。

 AFにかかるわずかなタイムラグも心配しなくていい。むしろ、人間のタイムラグの方が問題になる。

 直接の被写体ではなく等距離にある他のものにフォーカスを合わせておいて待ち伏せするという感じだ。

 これももう使う人が減ってる技だなあと思う。わたしももう何年も使ってない気がする。

 AFの高速化とコンティニアスAFの進化だ。今のミラーレス一眼はコンティニアスAFでも十分使える。

 さらに前述した被写体認識と組み合わせれば被写体を追い続けてくれるので、置きピンの必要がなくなった。

EOS R3でサーボAF+被写体追尾AFで連写した中の1枚。かなり迫ってくる中でもきっちり追ってくれる

 その上、指定した被写体を追い続けてくれる「被写体追尾AF」の性能がここ数年でぐっと上がってきたのだ。昔は精度が低くて(すぐ他の被写体に写ったり追尾しそこねたりしてた)実用性は低かったのだけど、今はかなりイケてる(機種によるけど)。

コンティニアスAF時のカスタム設定も選べるように。これは富士フイルム「X-T2」のカスタム設定画面

 かくして、置きピンしなくても動体を撮れる時代になり、それが必要とされるシーンが減ったのだ。この辺のAF技術はまだ進化途中なので数年後にはもっと賢くて速くなってると思う。

 AFロックと置きピンは今でも有効な技ではあるのだけど、多くのケースで知らなくても問題なくなってる。

 技術の進歩によって、昔は必須だった撮影テクニックも、知らなくてもいいけど知ってると便利なことあるよ、的なものになっていくのだろうなあと思うとデジカメの進化を見てきている身として大変感慨深いのだ。

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