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富士山が噴火!? その時、日本は――“災害DXベンチャー”がSFで描く未来 無人航空機が果たす役割とは「SFプロトタイピング」で“未来のイノベーション”を起こせ!(2/3 ページ)

» 2022年06月24日 07時30分 公開
[大橋博之ITmedia]

新しい技術を社会実装する その訓練を物語でやる

大橋 ヒアリングで「日本には運用されていない空港がたくさんある」と聞いたので、僕も調べてみたら富士山の近くに三保飛行場など災害時用の空港がありました。

松浦 テラ・ラボとしてはわざわざ空港を作るのではなく、そのような空き空港を活用して、そこを拠点として整備できればと考えています。

 5機でデータを収集し、本社でコントロールしてさまざまな政府機関や行政機関、報道機関にデータを提供することを構想しています。

 また、災害が起こると、そこにある拠点は機能しなくなると思います。南海トラフ地震が発生すると中部地方の滑走路は機能が停止する可能性がある。すると他の拠点から情報を収集しに行く、後方支援をする必要もあります。そうして集めた情報はクラウドにアップして、日本国内だけでなく世界中に状況を伝えていく、そんなシステムこそテラ・ラボの将来像のイメージです。

photo コントロールセンター。画面にさまざまな情報が映っている(イメージ)

大橋 災害監視用無人航空機でも富士市の拠点がピンチになって、名古屋本社が支援にかけつけるというお話にしてみました。実際のところ、構想の実現に向けたテラ・ラボのスケジュール感はどのようなものでしょうか?

松浦 現段階で1台が完成しています。5年以内には2〜3台が完成する予定です。

大橋 テラ・ラボの無人航空機が日本中の空を飛ぶわけですが、実際に飛行させることは可能なのですか?

松浦 日本における無人航空機の機体認証のテストモデルを、テラ・ラボが果たそうとしています。こうした取り組みが評価され、政府の関係機関もテラ・ラボに期待してくれています。このようなことも2〜3年前までは夢物語でした。

大橋 災害監視用無人航空機では、10年先を描いてみました。本当に富士山が噴火するかどうかは別にして、スケジュールよりも早く10年以内に理想的な対策が取れるようになるかもしれませんね。

松浦 そうです。そのためには、社会実装も大切ですが、夢を描くことも大切です。ゴールを見せてそこからバックキャスティングする。実装化するための訓練をストーリー(物語)でやる必要もあります。

大橋 SFプロトタイピングはまさに、バックキャスティングの手法です。どのような未来を描き、そのために、今、何をすれば良いのかを考えることが大切だと思います。

 SFプロトタイピングは、ただの夢物語ではなく、テクニカル的なことも重視しないといけないことです。テラ・ラボの事例では、無人航空機の最大飛行速度はどれくらいで、飛行距離はどれだけかといった情報を把握してないとリアリティーは出てこないと考えています。

松浦 災害も同じです。SF作家・小松左京の小説「日本沈没」が現実に起こるかは疑問ですが、南海トラフ地震や災害監視用無人航空機で描いた富士山の噴火はいつ起こっても不思議ではない状態です。

 災害が起きるとさまざまな事故が誘発される可能性があります。そのような事故や危機対策を、市町村の危機対策部署の在り方から考えなければなりません。将来的には日本全国の危機対策部署のシステムを統合する必要があるし、情報収集や発表の仕方を抜本的に変えていかなければならないと思っています。

 テラ・ラボでは実際に、中部地方で社会モデルを作る動きを始めようとしています。リアルとSFが融合した物語が求められているとも言えます。

photophoto テラ・ドルフィンと連携して情報収集に当たる中継車(イメージ)

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