輻輳とはさまざまなものが1か所に集まってくることを示す言葉であり、通信業界においては音声通話やデータ通信のトラフィックが特定の箇所に集中する状態を指す。通信のネットワークは道路、そこを流れるデータは車に例えられることが多いのだが、輻輳は道路の特定の場所に車が集中し、渋滞が発生している状態と考えれば分かりやすいだろう。
それゆえ輻輳が起こす問題も、道路で起きる問題と共通している。渋滞で混雑すれば車の流れが悪くなり、走行する車の速度が落ちたり止まったりしてしまうが、通信でも同様に、輻輳が起きることで通信速度が遅くなったり、通信ができなくなったりする訳だ。
そしてネットワークのある部分で通信ができなくなってしまうと、他の部分にある機器からの要求にも応えられなくなるため、輻輳の連鎖が起きてしまうことも多い。今回のKDDIの障害でもVoLTE交換機で発生した輻輳が、スマートフォンなどの端末の位置を登録するモバイル通信の要となる「加入者データベース」からの応答に応えられなくなり、その結果加入者データベースにも輻輳が発生して障害の規模が大きくなってしまったのだ。
この輻輳はさまざまなタイミングで起きることがあり、代表的な事例は大規模災害の発生時である。災害発生時は多くの人が被災地に連絡を取ろうとするため、特定の地域に音声通話が集中して輻輳状態に陥り、電話がつながりにくい状態となってしまう。
また大規模なイベントなどで特定の場所に多くの人が集まった時も、そこにいる人たちが一斉にスマートフォンを使って通信をするため輻輳が発生しやすい。ただ輻輳が発生してしまうと、110番、119番といった緊急時の重要な通信もできなくなってしまう可能性が高まるため、携帯電話会社は輻輳の発生に向けさまざまな対処を実施している。
前者の例でいうならば、爆発的なトラフィックが発生した時は音声通話の発信を規制して輻輳の発生を防ぐことが多く、その際は発信時に電話が込み合っている旨のアナウンスが流れる。また緊急通報などの重要な通話はネットワークに専用の領域を用意し、輻輳の影響を受けないようにするなどの対処を実施している。
また後者の事例であればイベントの開催が事前に分かっていることから、あらかじめ移動基地局車などを現地に派遣。現地のトラフィックを分散して輻輳の発生を防ぐことが多いようだ。
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