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皮膚に貼れる米粒サイズの超薄型マイク 人の耳より広範に録音Innovative Tech

» 2022年07月13日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 韓国の浦項工科大学校の研究チームが開発した「A High-Fidelity Skin-Attachable Acoustic Sensor for Realizing Auditory Electronic Skin」は、人間の耳よりも広い音場で録音できる、人間の皮膚などの柔軟な表面に装着可能な小型マイクだ。

人間の皮膚のような柔らかい表面にも取り付けられる今回の小型マイク

 スマートフォンやBluetooth端末などに使われている従来のMEMS(Microelectro-mechanical systems)マイクロフォンは、薄くて小さい精巧な振動板構造をしている。だが硬くてもろいシリコンでできているため、周波数応答が悪く音圧範囲も狭く音感の品質には限界があった。

 この課題に挑戦するため研究では、人間の耳よりも広い音場を実現する皮膚に簡単に装着可能な小型・薄型のマイクロフォンを提案する。シリコンよりも柔軟で自由な形状に設計できる高分子材料を用い、MEMSベースの振動板構造を作り上げた。

 大きさは指の爪の4分の1(9平方ミリメートル以下)、厚さはわずか数百マイクロメートルと薄くて小さい。このマイクは手や腕、首などの皮膚に貼り付け、あたかも本物の人間の皮膚のように装着することができる。

 このマイクの聴覚感度は人間の耳よりも高く、周囲の音やユーザーの声をゆがみなく認識できる。音声検出の品質は、スマートフォンのマイクに匹敵する。

 さらに、聴覚障害を引き起こす85デシベル以上の大きな音も、人間には聞こえない低周波の音も検出可能だという。また広い温度範囲(25〜90度)でも音波の検出品質を維持できるという。

 デモンストレーションでは、提案マイクを手の甲に貼り付け、スマートフォンと接続して音声アシスタントを活用した音声認識テストを行った。結果、音声認識による検索や翻訳などが容易にできたという。

手の甲にマイクを貼り付け、外部の音が入ってこない箱に閉じ込めたスマートフォンに音声入力している実験の様子

Source and Image Credits: Xidi Sun, Chengyan Zhao, Hao Li, Huiwen Yu, Jing Zhang, Hao Qiu, Junge Liang, Jing Wu, Mengrui Su, Yi Shi, Lijia Pan, Wearable Near-Field Communication Sensors for Healthcare: Materials, Fabrication and Application, Micromachines, 10.3390/mi13050784, 13, 5, (784), (2022).



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