「Experiments with Google」は、Googleが人工知能(AI)や拡張現実(AR)といった最新技術の可能性を示すために、実験的な応用例を紹介するショーケースだ。膨大なコンテンツを公開しており、その多くはスマートフォンやPCで試せる。
この連載では、多種多様な応用例の中から興味深いものをピックアップ。実際に遊んだ体験レポートを通して、テクノロジーの使い方とその可能性を考えていく。
読者の皆さんも、ぜひ自分の手で試しながらその仕組みを学んでもらえたらうれしい。きっと、最新技術の魅力に気付くはずだ。
連載13回目の今回は、Webブラウザ上でプレイできるジグソーパズル「Puzzle Party」を取り上げる。たまには肩の力を抜いて、気ままに遊べるコンテンツを紹介するのもいいだろう。暑い夏、外に出掛けるのがつらいときは暇つぶしにプレイしてみてほしい。
Puzzle Partyは、アート紹介プロジェクト「Google Arts & Culture」の一環で、Googleの開発チームが2020年10月に公開した。世界中のさまざまな名画や芸術作品をパズル化しており、楽しみながらアートに触れられる。
そんなPuzzle Partyは、離れた場所にいる人と一緒に同じパズルで遊べる特長がある。リリース当時はコロナ禍の真っ最中だった。外出や移動が厳しく制限されていた時期なので、離れて暮らす家族や友人に会えず、心細い思いをしていた人が多かった。「Google Meet」のようなWeb会議サービスを使った“オンライン飲み会”が広まったのもこの頃だ。Puzzle Partyを使えば、そうした不安を和らげて楽しい時間を過ごせる。
ジグソーパズルの題材は、フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」「牛乳を注ぐ女」、ゴッホの「糸杉と星の見える道」、奈良美智の「Your Dog」など誰もが一度は見たことがある作品ばかりだ。この中からパズルで遊びたい作品を選ぶ。
Puzzle Partyをスタートすると、数々の名画が一覧で表示される。せっかくなら最初は日本の作品でプレイしたいので、葛飾北斎の「富嶽三十六景 神奈川沖浪裏」を選んでみた。
作品を選ぶと、神奈川沖浪裏の絵がジグソーパズルのピースになって現れる。左下の見本を参考に、各ピースをドラッグで動かして絵を完成させていく。絵の選択画面で難易度「簡単」を指定していたから、ピースの数が少なくてやりやすかった。
パズルのセオリーに従い、隅と枠のピースから組み合わせていったところ、あっという間に完成できた。
完成したら作品の説明カードが表示される。ここで「詳細」をクリックすると、作品の詳しい情報を確認できる。これはニューヨークのメトロポリタン美術館に収蔵されているそうだ。浮世絵は木版画なので、同じ作品を東京国立博物館や東京富士美術館、MOA美術館などでも見られるといった豆知識を学んだり、色合いの違いを見比べたりするなどパズルだけにとどまらない面白さがある。
Puzzle Partyのいいところは、紙製のジグソーパズルと違って、同じ絵でもプレイのたびにピースの形や配置が変わるところだ。好きな絵で繰り返し遊んでも、飽きることなくプレイできる。
「簡単過ぎる」と思ったら、難易度を上げて挑戦しよう。難易度を「高」にすると、完成までそれなりに苦労しそうだ。
これでも物足りなければ、別の絵にするという手もある。例えばフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」は黒い部分が多いので、難易度を上げれば上げるほど取り組みがいがありそうだ。
絵によっては、難しすぎるかもしれない。フューチュラの「painting」はもはやお手上げだ。背景の色を濃い灰色に切り替えたら見やすくなったものの、難しいことに変わりはない。これはほぼ不可能だろう。
遠くの友達と遊びたいときは、絵を選んだ後で「マルチプレーヤー」をクリックすればいい。パズル共有用のURLが生成されるので、これを相手に伝えればOKだ。パズルに誘われた人は、送られてきたURLにアクセスするだけで参加できる。
マルチプレイが始まると、ピースの動きがリアルタイムに反映される。まるで同じテーブルに座ってジグソーパズルを遊んでいるみたいだ。オンライン飲み会の余興にもよさそうだ。
Puzzle Partyは、スマートフォン向けのGoogle Arts & Cultureアプリからでもプレイできる。この連載で以前取り上げた“バーチャル陶芸”を遊べる「3D Pottery」や、ペンギンと観光地巡りをできる「Hopper the Penguin」、不思議なキャラクターがオペラを奏でる「Blob Opera」も、このアプリ内で紹介されている。
Puzzle Partyの技術面に触れておくと、Google Arts & Cultureから絵画の画像を取得してパズルに組み替えている。そのためにJavaScriptやPaper.js、Node.js、WebSocket、Firebaseといった技術を使っている。画像データをパズル化できるなら、自分の撮った写真や好きなアートをジグソーパズル化できて楽しそうだ。ただし、残念ながらそうした機能は提供していない。
写真という意味では、米航空宇宙局(NASA)とコラボしたバージョン「Puzzle Party - NASA Edition」がある。国際宇宙ステーション(ISS)の船内や地球をバックにした船外活動の様子、懐かしいスペースシャトルなど、ワクワクするような画像がジグソーパズルになる。
離れた場所にいる人とコミュニケーションを取る方法はいろいろある。今回のPuzzle Partyは手を動かしながら雑談が生まれたり、好きな作品を通して相手の理解を深めたりできるだろう。オリジナルの画像をアップロードしてパズル化できるサービスがあれば、思い出を共有するきっかけになるかもしれない。
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