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Teslaのワクワク感はなぜ伝わらないのか走るガジェット「Tesla」に乗ってます(3/5 ページ)

» 2022年07月27日 07時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

スペックには現れないワクワク感を提供

 「既存の内燃機関のクルマと比較して相対的に不完全」と前述したようにModel 3は、ガソリン車の感覚で接すると何かと不便な部分が目につくことは否めません。しかし、そのような欠点を補ってなお、余りあるワクワク感、つまり情緒的価値をもたらしてくれることも事実です。

 ワクワク感などというエモーショナルな表現で恐縮ですが、その存在自体から否応なしに発散される近未来感や無線アップデートで機能向上する喜びといった、このクルマならではの価値にオーナーの多くが、所有する喜びを感じていることと思います。少なくとも筆者はそうです。

 よくEVは、デジタル端末のようにコモディティ化するといわれています。テクノロジーは常に進化するので、工業製品が、月日を経てある程度コモディティ化するのは致し方ないとは思います。しかし、Teslaのようにワクワクする価値を継続的に提供することができれば、その沈下速度は緩やかになり、一定期間、一定の満足度を保持し続けることができるのではないでしょうか。

photo Teslaのドッグモード。短時間であれば、炎天下を連れ回すよりエアコンをガンガンに効かせた車内に残しておいたほうが犬にとっては快適なのではないか

 例えば、2019年のアップデートでTeslaに追加された、ペットを空調で快適な車内に残してクルマを離れることができる「ドッグモード」も、モビリティーライフという領域における、Teslaならではの価値提供なのです。ちなみに、ドッグモードは、イーロン・マスク氏宛のユーザーの要望ツイートにより追加されました。

 また、日産のEV「ARIYA」の内装デザインには、日本の石庭や組子の模様といった、日本の伝統美や禅のデザイン思想が取り入れられているといいます。これも、日産が考える1つの価値であり、世界で戦える日本独自のユーザー体験を提供しようとしているのでしょう。

photo 日産のフラッグシップEV「ARIYA」の内装。日本の伝統美や禅のデザイン思想が取り入れられている

 トヨタは、米国特許商標庁にEVに関する8件の新たな特許申請を行ったといいます。その内容が驚きです。EVなのに、疑似的なクラッチ操作やシフト操作を体感できる機能を備えるといいます。また、3ペダルにすることで、クラッチをつなぐ感覚に近い振動やギアチェンジ時の失速感まで表現するそうです。

 あくまでも特許申請なので、将来、トヨタのEVに実装されるかどうかは未知数ですが、これもEVに対するトヨタ流の情緒的価値の提供手法だと理解できます。

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