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「ローミング」は通信障害の救世主になり得るか? 実現に立ちはだかる“3つの壁”(1/3 ページ)

» 2022年07月29日 08時00分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 KDDIの通信障害の影響から、他社の携帯電話ネットワークを経由して通話や通信を維持できるよう、非常時にローミングを活用することが注目されている。だが、その実現には技術面より運用や法律面で多くの課題を抱えているのに加え、今回のような通信障害では有効に機能するとは限らない。「ローミングで通信障害対策」の実現可能性と課題について考えてみたい。

なぜローミングが注目されるようになったのか

 7月2日から3日以上にわたって続いたKDDIの通信障害は、とりわけ音声通話の中枢部分で障害が起きたため110番などの緊急通報ができなくなる事態を招いたのに加え、モバイル通信がスマートフォン以外にも利用されていたことから、社会的にも非常に大きな影響を与えるものとなった。

7月2日に発生したKDDIの通信障害はその後3日以上にわたって影響が続き、社会的にも非常に大きな影響を与える結果となった

 KDDIは7月29日に会見を実施する予定で、そこで障害発生のより詳しい原因と、影響を受けた利用者への補償などについて言及するものと見られている。もちろん今回の通信障害は社会的にも影響が非常に大きなものであっただけに、KDDIには今後大規模障害を起こさないための一層の取り組みが求められるだろうが、程度の差はあれ、ここ数年のうちにNTTドコモやソフトバンクも大規模な通信障害を発生させており、やはり社会的に大きな影響を与えている。

 そしてどんなに各社が努力をしても通信障害をゼロにはできないだろうし、モバイル通信の利用が人だけでなく機械にも広がり社会的重要性が一層高まっていることを考えると、通信障害が起きた時の影響は今後一層大きなものになるだろう。そして今回のKDDIの事例を見れば、その影響を個々の企業努力だけで回避するのは限界に来ており、業界全体で通信障害に対処できる仕組み作りが求められているのは確かだ。

 そこで急速に注目されるようになったのが「ローミング」の活用である。ローミングは自社のユーザーが自社のネットワークの外にいる場合、そのエリアをカバーしている他の携帯電話会社のネットワークと相互に接続し、自社ユーザーが通話や通信をできるようにする仕組みだ。

 ローミング自体は通常のサービスとして提供されているものでもあり、代表的なものとしては海外渡航時にお世話になる人も多いであろう、国際ローミングが上げられる。国内では、新規参入の楽天モバイルが、自社のネットワーク整備が進むまで、整備が進んでいないエリアをKDDIのネットワークにローミングしてカバーしている事例もある。

新興の楽天モバイルは2018年にKDDIと提携、まだ整備が済んでいないエリアをKDDIのネットワークにローミングしてカバーしている

 それゆえ災害や、今回のような通信障害で自社ネットワークが利用できなくなった時、一時的に他社のネットワークとローミングすれば通信を継続できるとして、非常時のローミングに注目が集まっているようだ。実際、金子恭之総務大臣は7月12日の会見で、記者からローミングの実現について問われた際「臨時的に他の事業者のネットワークに乗り換えることができる、いわゆる事業者間ローミングの実現も重要な課題のひとつと認識しております」と回答、実現に向け具体的な検討を進めたいとしていた。

 さらにここ数日のうちに、携帯各社が障害発生時のローミングを検討するなどの報道が相次いでいる。そうした状況から今後、行政を交え非常時のローミング実現に向けた議論が進められる可能性が高いとされている。

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