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散財系YouTuberが支える、貧しき国のカタチ小寺信良のIT大作戦(1/2 ページ)

» 2022年08月08日 17時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 「気絶したら買ってた」、「ポチッとな」など、衝動買いを表わすネットスラングは昔から使われてきた。それだけ多くの人が衝動的な買い物の経験があり、それを自虐的に報告するという行為もまた、昔から行なわれてきたということだろう。「衝動買い」で検索すると、意味の解説だけでなく、精神的な意味や、抑制する方法なども多く見つかる。

 ストレスを解消するために買い物してしまうという例も少なくないが、度を超すと心配になる。筆者の知る例では、ちょっとしたものでもすぐAmazonで買ってしまうが、買ったことで満足してしまい、開封されないままの箱が一部屋ぶん積み上がっている人がいた。友人間では「Amazonタワー」と呼ばれていたそれを、引越の際に友人総動員で全部開封してみたところ、本人にはほとんど買った記憶がないという。後日聴いた話では、今は不要なので全部捨てたそうだ。お金はあっても、ストレスは減らない。

 「さとり世代」と呼ばれた人たちがいる。2010年代に若年世代であった人たちを表わした言葉で、一般的に「欲がない」と言われたことから、こんな地蔵みたいな名前で呼ばれることとなった。ゆとり世代の次、である。あれから10年、今「さとり世代」の人たちは、30代になっているはずだ。

 30代といえば、昔ならもっとも消費活動の旺盛な時期である。結婚して子供ができ、家を買ったり車を買ったりするタイミングだ。だが恋愛にも旅行にも興味がないと言われた人たちが、正規雇用されずに低賃金にあえぐ。しかもコロナ禍で巣ごもりとあっては、消費活動のメインターゲットは不在のままである。

 先日、車の中で地元FM局を聴いていたら、現役大学生のパーソナリティが、欲しい服がいっぱいあるときは、同じような好みを持ったYouTuberが爆買いする動画をじっくり見て、なんとなくそれで済んでいるという話をしていた。今の若年世代は、「欲しい」という気持ちはあるものの、お金がないので実際に購入するのは絶対に必要になものに限られ、嗜好品は他の人が買うのを見て満足……はしていないだろうが、ある程度の代償行為にはなっているということだろう。

photo 「散財」のキーワードで検索して表示されたYouTubeチャンネル

 YouTubeでは昔から、「開封の儀」と呼ばれるジャンルがある。モノを買って、それをテンション高く時間をかけて開封するというものだが、筆者は長いあいだ、そうした動画がなぜ人気が高いのか、はっきりした理由が見いだせなかった。そのYouTuberの話術が高いのか、あるいはおもしろおかしく見せる演出が効いているのか。

 だがラジオでその話を聴いたとき、積年の謎が溶けたような気がした。

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