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YouTubeで不正に収益化する6つの悪用方法、米研究者らが分析結果を公開Innovative Tech(2/3 ページ)

» 2022年08月17日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

アカウントを良く見せる偽装

 クリエイターが自分のチャンネルをより人気があるように見せるために、視聴回数、登録者数、いいね数、コメント数を不正な方法で増やしていることが確認できた。

 具体的には、オンライン・マーケットプレースでの購入と、登録者などを模倣するために作られたソフトウェア・ボットの活用の2つが観測された。

 オンライン・マーケットプレースで購入できる場所として、SubPalsとQQTube、そしてYouTubeAboneKasとSonukErというサイトが挙げられている。

 ソフトウェア・ボットは、機能(例:クリエイターにビューを生成する機能を提供するものもあれば、購読者やコメントを生成するものもある)および使用するために必要な技術能力(例:プリロードされたGoogle Chrome拡張、ユーザー提供の引数を持つPythonスクリプト)に違いがある。

 例えば、ビューを生成したいアカウントのビデオIDをアプリケーションに入力すると、さまざまなIPアドレスからのコンピュータ・インスタンスを使用してこのコンテンツに対するビューを自動で収集してくれる。

199.00ユーロでローカルコンピュータ上で動作するビューボットアプリケーションの販売リスト

コンテンツ内で視聴者をだます

 悪意のあるクリエイターは、アップロードされたコンテンツを利用して、金銭的な利益を得るために外部コンテンツを宣伝したり、ユーザーの個人情報を収集したりしている。

 具体的には、動画の説明文や動画メディア自体にリンクを貼り付け、YouTubeにアップロードすることで、視聴者を外部サイトにリダイレクトする。その先では、フィッシング詐欺や広告などが待ち構えており、広告収入や個人情報の収集が行われる。

視聴者を外部サイトにリダイレクトする仕組み

 悪質な事例では、映画の短いクリップをYouTubeにアップロードする。本編の長編が見たい場合はこちらとリンクを踏ませる。その先のWebサイトでは本編が見たいならアカウント登録するよう誘導される。

 また、指定された映画の本編を視聴できることを約束する文章が添えられたリンクがあり、クリックするとクリック課金型のURL短縮サービスを宣伝するWebサイトに誘導される。

アカウント登録しないと本編の映画が見られない詐欺サイトの例
アフィリエイトリンクをクリックしないと本編が見られないと誘導する詐欺サイトの例

 この悪用は海賊版コンテンツの配布も促進することが分かった。視聴者は、無許可でアップロードされた映画を含むGoogleドライブのフォルダにリダイレクトされたり、海賊版コンテンツをダウンロードするためのグループに参加するよう誘導されたりする。

海賊版コンテンツを促進するMoviez Corner GroupのTelegramへの参加を促す事例

コンテンツの窃盗

 コンテンツクリエイターが動画サイトからビデオコンテンツを不正にダウンロードし、編集し自分のYouTubeチャンネルにアップロードすることで個人的に収益化する悪用方法が確認できた。

悪意のあるクリエイターが使用するコンテンツ窃盗の手順

 YouTubeの自動著作権検出を回避するための多様なテクニックが提案されていた。例えば、ビデオクリップにロゴ、字幕、モザイク、画像、フレームを追加、またはビデオをズームさせる、ミラーリング、反転させるなどの加工を行う。6割ぐらいがフレームで残りの4割の領域だけが元の動画といった例も存在する。

 このようにして、YouTubeの自動著作権検出を回避しながら、著作権者に無断でアップロードし収益を得る。

著作権侵害の検出を回避するためのテクニック。左上から右下へ:未編集の動画、ズームイン、ミラーリング、枠の追加、角のぼかし、フレームの追加

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